歪んだ月が愛しくて1



立夏Side





「だから大丈夫だって言ってんじゃん、子供じゃないんだから」

「大丈夫でも付いて行きますぅ〜」

「寧ろ引っ張られてるんだけど…」



「いいいから、いいから」と人の話を全く聞かない未空に強引に腕を引っ張られながら俺達は学生棟の廊下を歩いていた。



「はーなーせー」

「それは出来ない相談だね」

「何でだよ」



百歩譲って送ってもらうことは良しとしよう。
でも手まで繋ぐ必要ないよね?しかも俗に言う恋人繋ぎって何?いくら俺でも恥ずかしいから。



「未空さん、これはマジで恥ずいって…」



勘弁してよもう…。



「大丈夫!リカは可愛いから!」

「お前離す気ねぇだろう」



「あ、バレた?」と誤魔化す気のない未空に俺は面倒臭くなって抵抗するのを諦めた。
だってもう絶対離す気ねぇじゃんこれ。また親衛隊に目付けられたらどうしてくれるんだよ。
そんな恨み言を未空の背中に投げ掛けていた時、不意に未空が足を止めて振り返った。



「……ごめん」



珍しく真剣な声が降って来た。
その声に顔を上げると未空は眉を顰めてジッと俺を見つめていた。



「未空…?」



それは何に対しての謝罪なのだろうか。

未空の言葉とその表情の意味が分からない。



「……本当に何もされなかった?」



あ、これはもしかして…。



「白樺のこと言ってる?」

「それ以外ないじゃん…」



だとしたら尚更分からない。



「何で未空が謝るの?」

「何でって…、俺のせいじゃん!俺がみっちゃんとふざけてたせいで白樺のこと全然気付かなくて、そのせいでリカに嫌な思いさせて…っ」



ここが公共の場と言うことも忘れて未空は声を張り上げる。



「絶対何か言われたでしょう?嫌な思いしたでしょう?」

「………」



先程のことを思い出す。
嫌な思いしたかって聞かれたら勿論した。



でも…、



「ほら、やっぱり…」



それは未空のせいじゃない。



「何であの時話してくれなかったの?話してくれたらもっと別の対処が出来たかもしれないのに…」

「大事にしたくなかった、から…」



ムカついたしウザかったし相手にするのも面倒だったけど白樺の気持ちは分からなくもなかった。何より俺のせいで退学になって欲しくなかった。
ただそれだけの理由。俺の自己満足を一々説明する必要はない。だから話さなかっただけ。



それなのに…、



「……俺、そんなに頼りない?」



……違う。

未空のせいじゃない。



何でそんな顔するの?

それは俺のせいなの…?


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