歪んだ月が愛しくて1

クラスメイト




シャシャッと、紀田先生は俺の名前を黒板にチョークで縦に書いていく。



「はい、ちゅうもーく。今日からうちの子になる藤岡立夏だ。お前等仲良くやれよ」



……うん、やっぱり転校生パターンか。

そんな気はしてた。



「ほれ、お前からも何か一言」



何かって言われても特にない。
クラスメイトの視線がこちらに集中するのが分かる。
今までこんな風に人前に出ることなかったから少し緊張する。



「……藤岡、です。宜しく…」



別に本心から言っているわけではない。
友達なんてもの作るつもりはないしただの社交辞令だ。



「ぷっ、緊張してやんの」

「するか」



短い自己紹介が終わるとどこからか拍手が聞こえて来た。
音のする方に視線を向けると不意に碧い瞳と目が合った。
大地の如く広大で透き通るビー玉のような綺麗な碧い瞳に思わず息を飲んだ。
自分の瞳とはまるで異なる美しさに好奇心を擽られた。



「C組へようこそ!」



彼が拍手してくれたことで周りのクラスメイトが次々に声を上げる。



「っ、おおぉぉおおお!!」

「キタコレ!当たりじゃん!」

「眼鏡萌え♡」

「鳴かしてみてぇ!」

「おい、あんまりイジメんなよ。涙目じゃんか」



いや、泣いてねぇし。

話の内容は最後しか聞き取れなかったが、取り敢えず歓迎してくれてるっぽいから良しとしよう。



「良かったな、歓迎されて」



エスパーか。



「じゃあ立夏の席は…」

「はいはーい!ここ開いてまーす!」



紀田先生が教室全体を見渡すと碧い瞳くんが大きく手を振って俺を呼び寄せる。



「……仙堂の隣か。チッ、仕方ねぇ」



碧い瞳くんは仙堂って名前なのか。

でも何で舌打ち?



「立夏、窓側の一番後ろの席だ」

「はい」

「……何だ、眼鏡外さなかったのか」

「あ、忘れてた」



だから歓迎されたのか、眼鏡を掛けたままだったから。

やっぱり眼鏡を掛けた方が少しはマシに見えるみたいだ。



「良いじゃねぇか。似合ってるぞ」

「っ!?」



紀田先生の息がダイレクトに耳に直撃する。
何とも言えない変な感じに身体を震わせる。



「ああー!紀田ちゃんずりー!」

「抜け駆け禁止!」

「煩ぇぞ。授業妨害すんなら単位減らすぞ」

「出た!職権乱用!」

「紀田ちゃんが真面目に授業したことなんてあったっけ?」


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