歪んだ月が愛しくて1
俺は紀田先生から離れて仙堂くんの元に向かう。
その途中クラスメイトから「宜しく」「仲良くしような」などと声を掛けられたが、俺はまるで他人事のように冷めた目で見返していた。
「よっ!」
「あ、えっとー………よ?」
「何で疑問形?リカって面白いな!」
「……リカって、俺のこと?」
「うん!リッカだから縮めてリカ!可愛いだろう!」
「いや、全然」
「えー!スゲー可愛いのにー!」
どこがだ。
「ね、ね、リカってどこから来たの?東都?」
「そうだけど…」
「特待生って聞いたけどやっぱり頭良いの?ここの編入試験って超難問って噂だし」
「さあ?」
俺が自席に着くと仙堂くんはすかさず机と机をくっつけて無遠慮に距離を縮めて来た。
近い・うざい・迷惑の三拍子に思わず溜息を吐く。
「ヨージが言ってたけどここの編入試験に受かる奴は変態かキチガイくらいだって。リカも変態なの?」
「喧嘩売ってる?」
誰が変態だ。
初対面のくせに随分と喧嘩売ってくれるじゃん。
てかヨージって誰だよ。
「俺が言ったんじゃないよ。ヨージが言ってたんだもん」
だからヨージって誰だよ。
「まあ、リカが変態でもキチガイでもどっちでもいっか。リカはリカだも…「あのさ、静かにしてくれない」
途端、彼はキョトンとした。
何を言われてるのか分からないって顔で。
「アンタ煩いよ。今授業中だろう」
「………」
勉強は苦手だ。
でも授業中は静かだから嫌いじゃない。
「それにアンタが煩いとこっちまで悪目立ちすんの」
それなのに彼がそれを邪魔する。
喧しいのは勉強よりも苦手で。
「迷惑」
嫌いだ。