歪んだ月が愛しくて1
「もう、先に起きてたんなら一声掛けてよ!部屋行っても中々出て来なかったから心配しちゃったよ!」
「ご、ごめん。御手洗くんもいるから起こしたら悪いと思って…」
「別に気にしなくていいのに」
いやいや、気にするだろう。
そうとは言えず適当に誤魔化した。
(コイツ、分かっててやってんのか…?)
俺が寝不足なのも、今日に限って未空を置いて先に食堂に来たのも、昨日未空が俺にあんなことをしたからだ。
何かの間違えかと思ったが唇の端に残る温かい感触にこれは現実だと教えられた。
何で未空があんなことしたのかは分からない。
でも昨日の未空は何だか不安定で酷く怯えているように見えた。
『……ごめん、ね』
そんなことばかり考えていたら気付けば朝になっていたと言うオチだ。
「はよ」
「頼稀くんおはよう」
「おっせぇぞ頼稀」
「お前が皿洗い押し付けてとっとと先に行くからだろう」
「働かざる者食うべからず!」
「チッ…」
「リカ、目の下の隈どうしたの?寝不足?」
「あ、これは…」
未空に指摘されて片目を隠す。
なるべく未空に見られないように俯くと希によってグイッと肩を引き寄せられた。
「眼鏡ちゃんは今日の新歓が楽しみだったんだよなぁ〜」
……は?楽しみ?
こんな憂鬱な気持ちなのに?
そもそもインドア派だって言ってんじゃん。
「ああ、子供が遠足前に眠れなくなるあれか」
「Yes!」
「どこもイエスじゃないよ。俺は幼児か?」
「楽しみ過ぎて逆に目が冴えちゃったんだね」
「意外と子供っぽいとこあるんだな、眼鏡ちゃんも」
「そんなリカもかっわいー♡」
「いや待って。人の話聞いて?」
「ガキか」
「誰がガキだ!?」