歪んだ月が愛しくて1



未空の手が俺の頬に触れる。
甘さを含んだ端正な顔を近付けるものだから俺を見つめる空色の瞳に思わず吸い込まれそうになる。



ヤバい。逃げ場がない。



「リカ…」

「っ、」



背筋が震えるほどの甘い声で囁かれ、もうどうしていいのか分からない。



「ダメだよ」



そんな俺を真っ先に助けてくれたのは意外にも葵だった。
葵は未空の両腕を剥がして俺の身体を自分の方に引き寄せた。と言うより後ろから抱き付かれてるのか。
そんな葵の言動に未空は不満げな表情で口元を窄めた。



「……アオ、邪魔」

「邪魔はお前の方だろう。いつまで立夏に抱き付いてるつもりだ」

「眼鏡ちゃんは未空だけのもんじゃないんだぞ」



そして参戦する、頼稀と希。

……何だこの睨み合いは?



「お前、もう少し周りを見て行動出来ないのか?この状況でよくそんな真似が出来るな?」

「空気を読まないのは未空の長所だけど時と場所は考えような」

「……何?のんちゃんもリカ狙いってこと?」

「頼稀もだよな?」

「そう言う問題じゃねぇだろうが…」



そう言うと頼稀は溜息を吐いて「先に行くぞ」と席を立った。



「どこ行くの?」

「大講堂」

「何で?」

「……バカ」

「は?」



聞き捨てならない。



「言っただろう、今日は新歓だって」

「この後大講堂で説明会があるんだよ」

「え、そうなの?」

「まあ、リカは知らなくて当然だよね」

「ほら、立夏くんも行こう!」



葵の言葉を合図に全員が立ち上がり俺は未空と葵に手を引かれながら食堂を後にした。


< 246 / 552 >

この作品をシェア

pagetop