歪んだ月が愛しくて1
「あんにゃろ、拉致ったな…」
いくらアオとのんちゃんでも俺からリカを取り上げるなんて許さないからな。
「落ち着けよ。あの2人がついてるんだから心配することねぇだろう?」
「これが落ち着いていられるか!」
俺が3人の後に続いて人混みを掻き分けると突然頼稀によって腕を掴まれた。
「待て。お前に話がある」
「何だよこんな時に。早くリカ達と合流しないと完璧逸れるって」
「その前にお前に話して置きたいことがある」
「話?」
いつになく真剣な顔付きの頼稀に俺はリカを追うのを諦めて頼稀と向き合う。
このタイミングで切り出すってことはリカ達3人には聞かれたくない話ってことだよな。
「……何?」
それにしても頼稀が俺に話って何だろう。何か2人っきりってのも気まずいし。
考えてみたら頼稀と2人って初めてかもしれない。俺達の傍にはいつものんちゃんとアオがいたし、クラス以外では俺は尊達と一緒だったから頼稀と2人で何かをするってことはまずなかった。
それに頼稀は元々大勢でつるむのを好まないタイプで、反対に俺は独りになるのが嫌で誰彼構わず媚を売るような卑怯な人間だ。
馬が合わないとまでは言わないけどのんちゃんやアオがいなかったらきっと友達にはなれなかったと思う。
だから俺は頼稀が何を言いたいのか全く見当が付かなかった。