歪んだ月が愛しくて1



「おっと副会長様。何か大切なことをお忘れじゃなくて?」

「そう思うなら自分で説明して下さい」

「へいへい。はーい、ちゅーもーく。バッチを盗られた奴はそいつの言うことを一つだけ聞くって言う罰ゲーム付きだぜ。勿論非常識な内容はご法度な。言うこと聞きたくなかったら精々逃げ切るこった。制限時間までに逃げ切れた奴には生徒会からの素敵なご褒美が待ってるぜ。存分に期待してろよ」



ヨージがニヒルに笑えば再び黄色い歓声と共に生徒達が盛り上がる。



ムカつくなその顔…。

みーこじゃないけどぶん殴りたくなって来た。



「……やってくれたな」

「お、俺のせいじゃないからねっ」



種目もルールも決めたのはヨージと九ちゃんだし。俺だって昨日聞かされたんだからね?



「3年前と一緒だな」

「あ、あー…あの時と同じメンバーだからね…」

「考えるのが面倒だっただけじゃねぇのか?」

「それもあると思う」



3年前、俺達が中等部に上がったばかりの頃。
中等部の新歓でも今回と同じ罰ゲーム付きのレクリエーションをやった。
その時の生徒会役員が今と一緒のメンバーってわけ。そりゃ親衛隊も期待するわな。



「あーあ、俺もリカのこと捕まえたかったな…」

「お前がアイツを捕まえたところで立夏は庶務から逃げられねぇだろうが」

「そっか…って、何で頼稀が知ってんの!?」

「忘れたのか?」

「……あ、」



そう言えば頼稀は何とかって言う暴走族の情報管理をしてるって前にのんちゃんが言ってた気がする。



だから知ってるってこと?

……いや、何でよ?



「あ、そうそう。言い忘れてたけど…」



ヨージはステージ上からある一点を見つめる。
その姿にヨージが何を言いたいのかすぐに分かった。



「もう知ってる奴もいると思うが1年C組の藤岡立夏が俺達生徒会の一員になった」



やっぱり…。
何れは宣言すると思ってたけどまさかこのタイミングで発表するとは。
きっとリカは嫌な顔してるだろうな、目立つの嫌いって言ってたし。
でも絶好の機会ではある。
この場で宣言することでリカが生徒会に入ったことは全生徒に知れ渡った。
リカに手を出せば覇王が黙っていない。そう宣言したも同じだった。
その上でリカにもしものことがあれば覇王としてちゃんと処罰出来るってわけだ。多分ヨージの狙いはそれだ。……いや、あのヨージが自主的に動いたとは考え難い。



(みーこだな…)



「昨日はちょーっとややこしいことに巻き込んでくれちゃったみたいだけど、俺のりっちゃんにちょっかい出す奴等は誰であろうと許さねぇぞ。もし万が一、そんなバカなことする奴がいたらそん時は…、俺達覇王からのキッツイお仕置きが待ってるぜ」

「はぁ…」



誰がお前のリカだ!

九ちゃんも呆れてないで何か言ってよ!



再び講堂内がざわつく。
リカが生徒会の一員になったことに少なからず悲鳴が上がる。
でも俺はヨージの発言に青褪めている連中を見逃さなかった。


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