歪んだ月が愛しくて1



尊Side





屋上からだと地上の様子がよく見える。
合図と同時に一斉に動き出す生徒達がまるで巣から餌を求めて這いずり回る働き蟻のようだ。



「始まったか」



ガチャと、屋上の扉が開く。



「お、やっぱりここか」



そこに現れたのは陽嗣だった。
見飽きたその顔に大して反応することもなく視線だけを動かす。



「何の用だ?」

「いいのけ?りっちゃんはもう出てったぞ」

「1人でか?」

「いんや。猿と例のガキも一緒だ」

「そうか…」



陽嗣は煙草を銜えたままゆっくりと歩み寄り俺と肩を並べるとフェンス越しに地上を見下ろした。



「自分でそうなるように仕向けたくせに何澄ました顔してんだよ」

「………」



ふぅ…、と紫煙が宙に舞う。

その煙を目で追いながらこれからのことを考えていた。



「欲しい?」



その声に視線だけを動かせば陽嗣はニヤリと憎たらしい笑みを零して胸ポケットから愛用の煙草を見せ付けた。



「寄越せ」

「素直じゃねぇな」



陽嗣から煙草を奪い取り口に銜えると徐に陽嗣の顔が近付いて来た。
シュボと、陽嗣が銜える煙草の火が俺のに移り二つの煙が宙で交わる。



「……不味い」

「人に貰っといてそれ言っちゃう?」



PPP…。

不意に陽嗣のスマートフォンのアラームが鳴り響く。



「お、時間だな。俺達もそろそろ行くか?」

「お前も?」

「あたぼーよ。俺いてこその覇王だろうが」

「………」

「あ?んだよその顔?下で九澄も待ってんぞ」

「……どう言う風の吹き回しだ?」


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