歪んだ月が愛しくて1
陽嗣の藤岡に対する感情は複雑なものだろう。まあ、身から出た錆だから自業自得だが。
当人同士で何とかすべき問題だろうにアイツと来たら逆にそれを面白がってやがるから質が悪い。
だからと言ってこの前のように親衛隊を挑発されたら堪ったもんじゃない。
どうしたものかと思っていた矢先にこの態度だ。勘繰るのは同然だろう。
「俺だってこれでも覇王の一員よ。王様の命令はちゃーんと遂行させて頂きますよ」
それが余計に胡散臭い。
「……んだよ。まさかまだ疑ってるわけ?」
「前科もんが何言ってやがる」
「あー…確かにこの前のはちょっとやり過ぎたわ。ハンセーしてるよ」
「ちょっとかよ」
全然反省してねぇだろう。
「いや、マジでやり過ぎたと思ってるよ。我ながら大人げなかったわ」
陽嗣は煙草を銜えたまま罰が悪そうに頭を掻く。
「何か無性に堪んなくなってよ…」
「………」
何が…、なんて聞かなくても分かる。
藤岡に対する複雑な感情が陽嗣を困惑させていた。
それが良いのか悪いのか俺には分からねぇが陽嗣にとってそれは…。
「……ちょっと、無言はやめてくんない?」
ま、悪くはねぇな。
「お前を大人だと思ったことは一度もねぇがな」
「それ言っちゃう?お前だって同じようなもんだろうが」
「お前ほど擦れてねぇよ」
「どうだか。りっちゃんのことになると後先考えねぇくせに」
「言ってろ」
その言葉を適当に受け流す。
まともに相手してたら付け上がらせるだけだ。
「で、反省した後は?」
「んー…視野を広げるとか?」
「視野?」
「目に見えるもん以外を探してみようと思います。……ん、これって作文か?」
大方アイツに何か言われたんだろう。
それで大人しくなるとは分かり易いと言うか単純と言うか。
とは言えそれですぐに変われれば苦労しねぇが人間そう簡単に変われるもんじゃねぇからな。
「ま、気長にやれよ」
期待はしないでおこう。