歪んだ月が愛しくて1
「てかこんなところ油売ってないで早く行かなくていいのかよ?他の野郎にりっちゃん捕まえられちまうぜ?」
「言ったはずだ。アイツが誰に捕まろうと捕まった時点で俺の勝ちだと」
「……よく考えてみりゃこれってりっちゃんにスゲー不利な勝負じゃねぇか?」
「今頃気付いたのか」
「うわっ、せっこ。天下の神代サマがそんなことしていいのかよ?」
フッ、と無意識に口元が緩む。
愚問だな。今更何言ってんだ。
「要は勝てばいいんだよ。どんな手を使ってでもな」
欲しいものを得るためには手段を選ばない。それが俺のやり方だ。
それが良いか悪いかと問われれば決して良くはないんだろうが、そうまでして形振り構ってられないのは…、きっとそう言うことなんだろう。
常識なんてものはクソ食らえだが知っていて損はない。但しその常識に従うつもりは毛頭ないがな。
「わお、さっすが王様。言うことが違うね。だったら尚更他の野郎にりっちゃんを捕まえられんのは面白くないんじゃねぇのけ?」
「アイツはそう簡単に捕まらねぇよ」
「お得意の直感か?」
「そんなんじゃねぇよ。ただ…」
「ただ?」
『男に二言はねぇ。今度は俺の意志で生徒会に入る』
「アイツなら俺を退屈させないと思っただけだ…」
死んだ魚のような燻った瞳の奥に強い何かを感じた。
あの時からアイツの言葉が頭から離れなくて、何でもいいから声が聴きたくて、ついアイツを目で追っていた自分に気付いた。
『誰がバカだ。てかそんなことアンタに関係ないだろう』
『関係ないだと?俺が何のために…っ』
その理由を俺は知っている。
いや、気付かされた。
『……俺には分かるよ、白樺の気持ちが。想っても想っても報われない…そんな気持ちを時には感情に任せてぶつけたくなる時だってあるんだよ』
そして、この感情の名前も。