歪んだ月が愛しくて1

午前の部〈オニごっこ〉




立夏Side





木々の間を縫うように木の根に足を取られまいと注意しながら俺と未空と頼稀の3人は学園の裏庭を走っていた。
暫く走った後、後ろから荒い息遣いが聞こえて来たため徐々に足の回転を緩めて振り返った。



「は…はぁ…っ。こ、ここまで来れば…」



頼稀は膝に手を付いて息を整えながらも周囲の警戒を怠らない。



「ふぅ…、何とか逃げ切れた感じ?」

「……頼稀、大丈夫か?」



余裕そうな声を出す未空を横目に俺は頼稀の背中を擦って気遣う。



「だ…丈夫、だ…っ」

「頼稀、何かおじいちゃんみたいだな!」

「誰がジジイだ。言って置くがな、1時間ぶっ通しで走り続けてんのに息切れしてないお前達が可笑しいんだからな」



時間を確認すれば既に10時を回っていた。
頼稀が言うように1時間くらいは走り続けていることになる。



「頼稀が体力なさ過ぎなんだよ」

「俺は普通だ」

「うっそん。俺まだまだ全然イケるよ。リカも疲れてないよね?」

「まあ…。そんなことよりここはどこ?」



開始早々オニに見つかった俺達は兎に角逃げて逃げて逃げまくった。
そのせいか辺りは木ばっかりでここがどこだか分からない。
滅多なことがない限り裏庭には人が入って来ないとは聞いていたが、ここまで広くて何の目印もない樹海とは思ってもみなかった。これでは人が立ち入らないのも当然だ。



「……まさか、迷った?」

「まっさかー!大丈夫だよな頼稀!」

「何で俺に振るんだよ。帰り道なんて知るか。後先考えずに突っ走ってたのはお前達だろう」



シン…と、静寂だけが辺りを包む。



「何で後先考えないんだよ!」

「だから俺に振るんじゃねぇよ!」

「どうすんだよこれから!?」

「俺に聞くな!」

「喧嘩してる場合かよ。今はそんなことよりも…」

「いたぞー!藤岡立夏だ!」

「未空くんと風魔くんもいるぞ!」

「こっちだー!」



もう追手が来たのか。
もうお分かりだろうが、俺達が1時間ぶっ通しで走り続けていた理由は正にこれだ。
いくら逃げても逃げても何故かすぐに見つかってしまうのだ。



「「チッ」」



未空と頼稀の舌打ちが見事にハモる。



「リカこっち!」

「え、こっちって…、どこ行くの!?」

「兎に角走れ!捕まるよりはマシだろう!」


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