歪んだ月が愛しくて1
「ねぇ、ハニーって誰?」
「ふっふふ、それはね」
アゲハさんのマシンガントークはまだまだ続く。
この人に立夏と姫と皇先輩の話をさせたら長いからな。
何度も告白してるのにその度に玉砕してんだからいい加減諦めればいいものを。
(まあ、無理だろうけど…)
問題は皇先輩だ。
アゲハさんの気持ちを利用してよくもやってくれたな。
覇王の中でも皇先輩は一番の策士だ。
大方今までの追手も皇先輩が仕向けたことだろう。
勝つためなら手段を選ばない。本来の覇王らしいやり方だ。
でも…、
「アゲハさんはどっちの味方なんですか?」
少し低い声でアゲハさんに問う。
別に怒っているわけじゃない。
ただはっきりさせて置きたかった。
「勿論、僕はいつだって駒鳥の味方さ」
「………」
アゲハさんが目指す先にはいつだって立夏がいた。
今になってアゲハさんの意志が覆るとは思っていないが…。
「しかし今回は初めてのHoneyからのおねだりだったから…、ついね♡」
「あ?」
アゲハさんの意志を否定するつもりはない。
「つい…?」
俺だって惚れた弱みってのが一番厄介なのは知ってる。
知っているが…、ついってなんだよ?
開き直るだけならまだしも語尾のハートが無性にイラつくんだよ。
こっちは誰の意志を尊重してこんなまどろっこしい真似してると思ってんだ。
アゲハさんが立夏に興味を示さなかったら俺だって…。
こんなはずじゃなかった。
こんなにものめり込むつもりはなかった。
それなのに…、
『―――同情?』
……違う。
そんなんじゃない。
「頼稀」
でも何も知らなかったあの頃にはもう戻れない。
「僕の愛すべきHoneyのために渡してくれるね」
「頼稀…」
悪いけどこれは全部アゲハさんのせいだからな。
「アゲハさん」
この責任、取ってくれるんでしょうね?