歪んだ月が愛しくて1



立夏Side





「は…、はぁ…っ」



周囲に気を配り追手が来ないことを確認しながら木の幹に体重を預けて疲労した心身を労わる。



「疲れた…」



あれだけ全力疾走を繰り返してたら当然か。
でもいくら走っても未空と頼稀のことが頭の隅にチラついて離れなかった。
あれから2人と別れてもう30分以上は経つはずなのに一向に連絡が来ない。



捕まった?

……まさか、



Prrr…



「っ、」



制服のポケットの中で初期設定のままの着信音が鳴り響く。



「あっぶね…」



マナーにすんの忘れてた。
スマートフォンのディスプレイを確認すると心待ちにしていた相手からの着信に慌てて電話に出た。



「未空!」

『うおっ、リカ声でか!大丈夫?まだ捕まってない?』

「俺は大丈夫。そっちは?」

『んー…俺は大丈夫なんだけど頼稀がアゲハに捕まっちゃってさ』

「頼稀が!?」



信じられない。

しかも相手があのアゲハなんて。



『あ、リカのせいじゃないからね。頼稀は自分からアゲハに捕まったの』

「自分から?どう言うこと?」

『頼稀は昔からアゲハに逆らえないんだよね。何か事情があるみたいだけど』

「事情…」



考えられることは一つしかないが、よくよく考えたら捕まったのがアゲハで良かったのかもしれない。
アゲハだったら頼稀に無茶な要求はしないだろう。



『ところでリカは今どこにいんの?合流しようと思ったんだけど』

「絶賛迷子中」

『あははっ、絶賛ってウケんね!まあ、俺もなんだけどね〜』

「どうする?」

『合流すんのは無理そうだね。こうなったらお互い自力で逃げ切るしか道はない!』

「え、とー……ふざけてる?未空余裕だね」

『ふざけてないよ!俺は真面目に言ってんの!』



その割には芝居っぽかったけど…。



『残り20分くらいだけど…、大丈夫だよね?』

「当然」

『頑張って逃げ切ってね。本当は俺が傍にいてリカのこと守りたかったんだけど…』

「バカにすんなよ。俺だって男なんだからな」

『そうじゃなくて俺は…っ、あ、やべ…』

「は?ヤバいって…、おい未空!?」



プープー…



「き、れた…」



まさか未空の身に何かあったんじゃ…。















「長電話とは随分と余裕だな」

「っ!?」


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