歪んだ月が愛しくて1
未空Side
プープー…
「やば、充電切れか…」
こんな時に限って使えない。
そんな独り言を漏らしながらブレザーのポケットにスマートフォンを仕舞う。
「これからどうするかな…」
これで完全にリカとの連絡手段が断たれた。
さっきは自力で逃げろとか言っちゃったけど、本心ではリカのことが心配で心配で気が気じゃなかった。
方向音痴のリカにあの迷路みたいな裏庭を突破出来るとは思えないしやっぱり捜しに行くべきかな。でも俺も迷子だから人のこと言えないしどの道リカと合流すんのは無理か…。よし、ここは潔く諦めよう。
それなら俺の役目は1人でも多くリカの邪魔者を排除すること。
そうと決まればやることは一つしかない。
「……いつまで隠れてるつもりだよ。いい加減出て来れば?」
ガサガサと、草むらから黒い影が姿を現す。
しかしそこから現れたのは黒とは程遠い鮮やかな朱色だった。
「なーんだ、バレてたわけね」
「当たり前だろう。リカと電話してる時もずっと後ろにいたくせに…。ナメてんのかよヨージのくせに」
「俺の親切心をそう捉えちゃう?」
「嘘臭ぇ」
いつもセコ技ばっか使うくせに何が親切心だよ。
よくもそうスラスラとデタラメが言えるな。
「そういや、もう1人はどうした?一緒にいないとこ見るとまんまと九澄様の戦略に嵌っちゃったってところか?アイツもえげつねぇことするよな」
「やっぱり九ちゃんの差し金か…」
「ああ、九條院がもう1人のガキを、俺がお前を足止めしてりっちゃんを尊に接触させ易くするのが九澄の作戦だ。まあ、後のことは尊次第だけどな」
(九ちゃんらしい…)
自分の手を汚さず確実に勝利へと導く支配者。
覇王の名は九ちゃんで持ってるようなものだ。……表向きは。