歪んだ月が愛しくて1
「……そう言うことか」
「は?」
「何が“昔知り合いがやんちゃしてた”だよ。全部自分のことだろうが」
「、」
俺が会長にその話をしたのは偶然会長が喧嘩してる現場に居合わせた時だ。
「覚えてたんだ…」
自分で言ってしまったことは仕方ない。
こうなったら開き直ることにしよう。
「それは肯定と受け取るぞ」
「勝手にすれば?受け取り方はアンタの自由だよ」
「……なら」
「っ、」
すかさず会長は攻撃を仕掛けて来た。
正面から俺に向かって拳を突き出し不敵な笑みを浮かべる。
「手加減する必要はねぇな」
「こっの…」
楽に避けられたものの会長は攻撃の手を止めない。右から左へと拳が飛んで来る。
「いい加減に、しろっ!」
会長の右を左腕で受け流し反対に右足を繰り出す…が、呆気なく躱された。
「っと、チビは足まで短くて大変だな」
「はぁ!?」
人が気にしていることをグサグサと。
せめてキツイの一発で勘弁してやろうと思ったがもうやめた。
その無駄に美人面を見るに堪えない顔にしてやる。
「ぶっ飛ばす!」
会長を狙った右足が宙に浮く。
その右足を軸に身体を反転させ左足で会長の顔面を狙う。
「、」
俺の蹴りを完全に避けきれなかった会長の頬には薄らと鮮血が流れた。
「……やってくれたな」
「人をチビ呼ばわりしたせいじゃないですかー?」
挑発しながらも構えは解かない。
会長と一定の距離を取りつつ次の攻撃に備えていた。
するとどこからかスピーカー音が聞こえて来た。
その音に俺達の動きがピタッと止まった。
『あーあー…只今マイクのテスト中、只今マイクのテスト中』
今度は陽嗣先輩かよ。
『はーい、ちゅーもーく!副会長様に留守を任された陽嗣様だぜ!りっちゃん聞こえてるー?残り3分だけど大丈夫かー?』
大丈夫に決まってる。
負ける気はない。いや、負けたくない。
ただ嫌な予感がする。