歪んだ月が愛しくて1
「頼稀から聞いたが神代くんと勝負していたんだってね」
「勝負と言うか……賭け?」
「君が負けたら神代くん専属の庶務になるとか。ああ、何て羨ましいんだ」
「何が?」
アゲハもパシリが欲しいわけ?
頼稀がいるじゃん。
「それにしても流石だね。素晴らしい身のこなしだったよ。……しかし、やはりブランクかな?」
「分かってんなら聞くなよ」
「僕の調べによると君のブランクは9ヶ月と…」
「何サラッと言ってやがるこの変態ストーカー野郎!!」
一言余計なアゲハの尻に蹴りを一発お見舞いする。
しかし本人も余計なことを言った自覚があったようでビクともしなかった。
人の性癖にケチ付けるわけじゃないが変態野郎は頂けない。いや、正確に言えばアゲハが変態でもストーカー野郎でもどうでもいいのだ。その対象が俺でなければ。
黙っていたら格好良いのに勿体ない男だ。
「……ただ、君は少し目立ち過ぎた」
ふと、アゲハの声色が変わる。
その変化に無意識に身構えた。
「この学園には奴等がいる。奴等の狙いは君だ」
「奴等?」
「それは僕なんかよりも君の方がよく知っているんじゃないかな」
「………」
アゲハが何を言いたいのか分からない。
勿体振るような言動にイライラしてスッと目を細める。
「君は以前より奴等と面識がある」
でも落ち着かない。
「何たって奴等は君にとってこの世で最も憎むべき相手なんだからね」
「、」
……ああ、そうか。
そう言うことか。
アゲハはあのことを言ってるのか。
「―――“鬼”が君を捜しているよ」
『…ごめん、シロ……』
数ヶ月前のあの悪夢を。