歪んだ月が愛しくて1
「……それは、バレたってこと?」
俺が聖学にいることを。
俺が“___”だと言うことを。
「安心したまえ。奴等は君の正体には気付いていない」
「だったら何で…」
「それは君を捜しているのがあの男だからさ」
「、」
途端、あの男の顔が瞬時に頭を過った。
それだけで俺の不快指数が上昇するのが分かる。
「まさか、忘れたとは言わないだろう?」
顎に手を添えて口元に弧を描くアゲハを見て無意識に眉を顰める。
「……忘れるはずねぇよ」
忘れられるばずがない。
だってあの男は俺の大切なものを傷付けた。
あの日から一度だって忘れたことはない。
忘れたくても、思い出したくなくても、嫌でも思い出してしまう。
血に飢えた獣のような瞳と卑しい口元が俺を捉えてこう呼ぶ。
『シーロちゃん♡』
……ああ、イライラする。
あの男にそう呼ばれる筋合いはない。
俺を“シロ”と呼んでいいのはアイツ等だけだ。
心の中でかつての仲間の名前を呼ぶ。
頭に過るのは数ヶ月前まで彼等と過ごしていた幸せな日々。
もう二度と会うことは許されなくても彼等との思い出はいつまでも俺の心の中で生き続けている。
誰にも穢させない。誰にも踏み込ませない。
それは俺だけの大切な宝物。