歪んだ月が愛しくて1



俺のせいでアイツは傷付いた。
それは中途半端な力を振り翳した代償だった。
あの日から俺は喧嘩をやめてアイツ等の前からも姿を消した。



俺が傍にいると不幸になる、幼い頃に誰かにそう言われた。
分かっていたことなのに、経験したはずなのに、俺はアイツの優しさに甘えていつまでも縋っていた。



その結果アイツは…。



「でも独りでは行かせないよ」



すると頭上からアゲハの柔らかい声が降って来た。



「君がその茨に無謀にも突っ込むならば、僕はその茨を切り開くナイトになり君の進むべき道を照らしてみせよう。君が僕の道を照らしてくれたようにね…」



深碧の瞳が真っ直ぐに俺を射抜き自然な仕草で髪を掬う。
それが何だか気恥ずかしくて視線を下げて素っ気無い態度を取る。



「……いらない」

「おや、僕では不満かい?」

「アンタに守られる筋合いはない。……それに、俺はもう“___”じゃない。俺に構う必要はないはずだ」



元々“B2”にとって俺はチームを潰した敵だ。
そこまでしてもらう義理はないし、何でそんな俺に構うのかも分からない。



「でも“___”だって君じゃないか」

「……は、」



予想外の言葉に思わず目を丸くする。



「何を驚いているんだい?」

「だって、アンタが、可笑しなこと言うから…」

「おや、可笑しなことだったかい?」



……可笑しいよ。

だって俺が“___”なら、“___”だって俺のはずだ。

それなのにアゲハはそんな当たり前のことを堂々と言い放った。



「君が分かっていないんじゃないかと思ってね。余計なお世話だったかな」

「………」

「ん?どうしたんだい、急に黙ってしまって。もしや照れて…「ねぇよ」



照れていない。断じて照れてないが、アゲハに顔を見られまいと自分の足元に視線を集中させる。

こんな情けない顔、みすみす晒してたまるか。



「ふふ、可愛いね」

「……節穴か」



当たり前のことなのに。

それなのにちゃんと口に出して伝えてくれた。



俺を否定する言葉じゃない俺を受け入れてくれる言葉で。



(本当、可笑しな奴…)


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