歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
「そっか、陽嗣先輩が未空を…」
「うん、アイツの寝技に負けた」
「寝技?」
「ああ見えてもヨージは柔道のジュニアチャンピオンなんだよ」
「え、嘘っ!?」
「マジ。しかもえぐいことに得意技は関節外し」
「関節外し…」
えぐ。
「てか、リカスマホは?」
「スマホ?」
「迷子になったんなら電話くれれば良かったのに」
「……確かに」
あれから俺は迷子になったことを素直に話した。
案の定笑われたのは言うまでもない。ははっ。
「ま、多分電源切れてると思うけどね」
「何で?」
「だってさっきから電話掛けてるけどコール音鳴ってないもん」
そう言われて自分の黒色のスマートフォンを確認すると未空が言うように確かに電源が切れていた。
「アゲハが来てくれて良かったね」
「……うん」
アゲハはタイミング良く俺の前に現れた。
俺が迷子になったせいで捜してたみたいなこと言っていたが多分“鬼”のことがあったから態々時間を作って俺と接触しようとしたに違いない。
優し過ぎるんだよなアゲハは。
それに加えて「俺の望みを叶えたい」なんて甘ちゃんもいいところだ。
あれが族のトップだと思うと………うん、想像出来ない。
『“鬼”が君を捜しているよ』
今度改めてちゃんと説明してもらおう。
まだバレてないならそのくらいの猶予はあるはずだ。
「そう言えば何で俺が部屋にいるって分かったの?」
「全然分からなかったよ!だから色んなとこ捜しまくったんだから!」
「……トイレに引き続き?」
「トイレに引き続き!」
コイツ、ずっと根に持ってたな。
「でもさっき尊と会った時にリカが部屋に戻ったことを聞いてここに来たってわけ」
「会長が?」
変だな。会長とはオニごっこが終わってから一度も会ってないのに。
「あれ、尊と会ったんじゃないの?」
「……いや」
てか会いたくないよ。
あんなこと言われて面と向かって顔合わせるなんて無理だ。少なくとも今の俺には無理。
『訳分かんねぇから知りたくなる』
『俺も、お前も…』
『―――立夏』
「あぁああああクソッ!!余計なもん思い出した!!」
「リ、リカ…?」
頭がこんがらがる。
もうぐちゃぐちゃだ。
(本当、訳分かんねぇよ…)