歪んだ月が愛しくて1



「リカって強いんだね」

「……何、いきなり」

「スクリーンで見てたよ、尊との勝負」

「あー…」



そのことね。

嫌なこと思い出させないでくれ。



「のんちゃんもアオも他の皆も吃驚してたよ。リカが強くてスゲー格好良くて」

「へー」



全然嬉しくない。



「何であんなに強いの?何か習ってた?」

「……別に」

「それは答えになってません」



しつこい。



「何、気になるの?」

「気になるから聞いてんの」

「何で?」

「何でって、リカのことなら何でも知りたいんだもん」



俺は知られたくないけどね。



「……昔、ちょっと」

「ちょっと?」

「………」

「言いたくない?」



未空は俺の顔を下から覗き込む。眉間に皺を寄せた不安そうな顔で。



「小さい頃、少しだけ教えてもらってた…」



もう何年も前のことだ。

今はその思い出すら苦しくて辛い。



「ただ、それだけ」



本当は思い出したくもないし話したくもなかった。



「……納得した?」

「うん!」



でも未空にそんな顔させるくらいなら…。



「話してくれてありがとう!」

「……別に」



ま、いっか。


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