歪んだ月が愛しくて1



学生棟を出て未空と一緒に中庭に向かうとそこには既に何人もの生徒達が集まっていた。
でもまだ日が落ちてないこんな状態で本当に肝試しなんて出来るのだろうか、と疑問が沸く。



「17時集合って早くない?もう説明は終わってるんでしょう?」

「うん。でも早いってことはないよ。ここの肝試しは往復で1時間くらい掛かるからね」

「1時間!?」



うわっ、一気にやる気削がれた。



「あ、アオはっけーん!あっちに行ってみよう!」



未空に手を引かれるがまま葵の元に走る。
そこには葵の他にも頼稀と希、そして御手洗くんの姿があった。
このメンバーに御手洗くんが加わるなんて珍しい…と思ったが、聖学は殆どクラス替えがないって言ってたから皆からしたら普通の光景なのかもしれない。俺が知らないだけで。



………あれ、何かモヤモヤする。



何で?



「みっちゃーん!今日は宜しくねー!」

「フン、何で僕がお前なんかと組まなきゃいけないんだよ。言って置くけど生徒会主催のイベントじゃなかったらこんなくだらないことに参加しないんだからな!」

「とか何とか言っちゃって!今日はいつもより1時間も早く起きてたくせに!」

「っ、な、何でそのことを!?」

「みっちゃんって本当一途だよねぇ、誰かさんに対して」

「お、まえ…、よくも僕に恥を掻かせてくれたなっ!」

「キャー!みっちゃんに襲われるぅー!」

「誰がお前なんか襲うか!?」

「落ち着け御手洗」

「興奮し過ぎだぞ。未空のペースに乗るなんて珍しいじゃん。どうしたん?」

「どうどう」

「僕は牛じゃない!!」



頼稀と希と葵の3人が御手洗くんに追い打ちを掛ける。
そんな微笑ましい光景を遠巻きに観察していると不意に御手洗くんと目が合った。



「………」

「え、……な、何?」



御手洗くんは不機嫌そうな表情を隠すことなく俺を睨み付ける。
そして俺の姿を視界に捉えたまま。



「……許さない」

「え、」



それだけ言うと御手洗くんは走ってどこかへ行ってしまった。



「みっちゃん…っ!リカごめん!俺みっちゃん捜して来る!」



そう言って未空は御手洗くんの後を走って追い掛ける。
そんな未空の後ろ姿を見て俺は無意識に言葉を漏らしていた。



「許さない、か…」



昔も同じこと言われたな。



『お前があの子を殺したんだ!』



『―――を返せ!』



『貴様が代わりに死ねば良かったんだ!』



『お前さえいなければ…』



『この厄病神!』



『許さない!』



『許さない!』



ああ、思い出したくもない。


< 298 / 552 >

この作品をシェア

pagetop