歪んだ月が愛しくて1
「うーん、確かにアオも可愛いけど…」
「けど?」
「何だよ未空、俺のエンジェルに文句でもあるわけ?」
「お前の?」
「俺の!」
「そうじゃなくて。確かにアオも可愛いけど俺が言いたいのはリカも可愛いよねってこと」
「……は?」
「だからリカも可愛いよねって話。俺的にはリカが一番可愛く見えるんだよね」
「聞こえた?」と首を傾げる、未空。
……コイツ、自分の特性理解してるな。
「……聞こえたけど」
でも肯定したつもりはない。
そもそも男が可愛いなんて言われて嬉しいはずがない。
少なくとも俺は嬉しくないし迷惑以外の何者でもない。
それに気付かない未空は俺を見てニコニコと笑っていた。さも自分の言っていることが正しいような顔をして。
何も正しくねぇよ。全然間違ってるから。どうせ可愛いって言うなら葵に言ってやれよ。
チラッと、葵と目が合う。
「僕も立夏くんが一番可愛いと思う!」
天使に悪気はないと思う。
でも少しは空気を読んで欲しかった。
「立夏は可愛いって言うか綺麗って感じじゃね?眼鏡萌え的な?」
「俺を見るな。俺に同意を求めるな」
「否定しないくせにー」
「否定しないくせにー」
「煩ぇ」
「立夏くんは気付いてないかもしれないけど、立夏くんが教室に入って来た時皆吃驚してたんだよ。こんな綺麗な人がこの世にいるんだって僕も見惚れちゃったよ」
「綺麗って…」
恥ずかしい言葉を言っている自覚がないのか、葵の大きな瞳が真正面から俺を見据える。
いつもなら男に綺麗なんて言われても全然嬉しくないのに何故か反論する気になれなかった。下手に反論したらしたで返り討ちに遭いそうだし。
「ねぇ、俺の言った通りでしょう?」
「何でお前がえばるんだよ」
「俺が見つけたから!」
「え、眼鏡は俺のだけど」
「……眼鏡って俺?」
「立夏くんは眼鏡じゃないよ」
「そうだよ!リカはリカだよ!俺のリカ!」
「それも違ぇだろう」
ギャーギャーと目の前で談笑する4人から視線を逸らす。
友達と紹介するだけあって仲が良いのは明白だ。
でも俺には関係ない。
俺には友達なんて必要ない。