歪んだ月が愛しくて1



「そろそろ飯行くか」

「そうだね。早く行かないと混んじゃうし」

「腹減ったぁ〜」

「俺も」



不意に横から未空の視線を感じる。



「行こう、リカ」

「………」



躊躇なく手を差し出す、未空。

でも俺がその手を取ることはない。



「行かない」

「え?」

「俺は行かないから4人で行って」



はっきりと拒絶した。
その途端、教室内がしんと静寂に包まれるのが分かった。
しかも今度は未空以外の視線までもが俺に注がれている。



「……帰る」



居心地の悪い視線を浴びながらスクールバッグを持って教室を出て行こうとした時、不意に未空の手がそれを制止した。



「……何?」

「リカって、さ…」



未空は俯いたまま言葉を続ける。
きっと性格悪いとか空気読めとか言われるんだろうな。
自分でも空気を悪くさせた自覚はある。
でも未空ははっきりと言わないと分からないだろう。そう言う人種だ。
だから理解してもらうためにもはっきりと拒絶した。
それなのに次の瞬間、未空は俺の予想を上回るとんでもない言葉を口にする。



「リカって、腹が減ると不機嫌になるタイプ?」

「……………は?」



とんでもない。
  


「偶にいるよなそう言う奴」

「立夏もその口かぁ?」

「じゃあ相当お腹が空いてるんだね」

「………」



どいつもコイツも話が通じない。

俺ははっきりと「行かない」って拒絶したのに。

それなのにどうして…、



「腹が減っては戦も出来ぬ!」

「するの?」

「しねぇだろう」

「未空が急に博識ぶってる!ウケる!」

「ウケは狙ってないよ!と言うことで皆で食堂にレッツゴー!」

「ちょっ…」



そう言って未空は俺の腕を強引に掴んで歩き出した。



マジで勘弁してくれ。


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