歪んだ月が愛しくて1
午後の部〈肝試し〉
17時になり肝試しが始まった。
ルールは簡単だ。くじを引き2人1組のペアを決め1組目から順番にスタートする。
次の組は前の組が出てから10分後にスタートし裏庭の指定された場所にある封筒を取って中庭に帰って来ると言う至極簡単なもの。
但し肝試しと言うからには誰かしらお化け役がいるらしいが、上級生が担当と言うだけで誰がどこにどんな格好で待っているかまでは分からない。どうでもいいけど。
長いこと待たされた挙句、俺達がスタートした時には既に20時を回っていた。
流石に辺りは真っ暗で外灯の明かりだけでは心許なく懐中電灯がなければ歩くことも覚束ない。
遠くの方で悲鳴のような声が聞こえる。
まあ、今はそんなことよりも…、
「あの、さ…」
「………」
「……なあ、聞いてる?」
「………」
「おーい」
「………」
「(ダメだこりゃ…)」
頼稀は2人になった途端、急に言葉を閉ざした。
何かしらのリアクションが欲しくて諦めずに声を掛けてみたが、頼稀は反応してくれないばかりか歩みを止めてくれないので仕方なく頼稀の背中を眺めながら渋々後に着いて行くことにした。
テンション低いのか怒ってるのか知らないが無視だけはやめてもらいたい。
「何か言えよ…」
……俺、何かしたかな?
記憶を整理しても思い出せない。
ただもし頼稀が怒ってるとしたらその原因は先程のオニごっこ以外に考えられない。
俺が会長に負けたことを怒っている…、と言うより呆れているのかもしれない。
口も聞きたくないほど呆れているとしたら相当だな。
「………」
それでも頼稀は何も言わない。
これでは当分修復不可能かと思った時、不意に未空の顔が脳裏に浮かんだ。
そう言えば未空の頬にも俺を庇って出来た傷があったことを思い出す。
まさか…、
「頼稀っ、もしかしてお前怪我したんじゃ…!?」
咄嗟に頼稀の腕を掴んで強引に動きを止めさせると。
「……ない」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
「よ、かったぁ…」