歪んだ月が愛しくて1
食堂に入って目を疑った。
「………ここは、レストラン?」
「何言ってんの?どう見ても食堂じゃん」
いやいや、そうだけど。そうなんだけどさ。
「……何で食堂にシャンデリア?」
無駄遣いし過ぎだろう。
これだから金持ちの金銭感覚は麻痺してて困る。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
食堂の入り口には燕尾服を着たウェイターが何人か立っていた。
その内の1人が一礼をすると、先頭にいる頼稀が無言で右手を上げて燕尾服の男性に見せ付ける。
するとウェイターの男性は「畏まりました」と言って俺達をテーブル席へと案内した。
「こちらで宜しいでしょうか?」
「はい。ありがとうございます」
「ご注文がお決まりになりました頃にまたお伺います」
ウェイターがいなくなったことを確認して未空の耳元に顔を近付ける。
「何が食堂だよ。どう見てもレストランじゃん」
「えー、どう見ても食堂でしょう」
どこがだよ、と思わず突っ込みそうになるのをグッと堪える。
席まで案内してくれる食堂なんて聞いたことない。
「ま、普通はねぇよな」
絶対ねぇよ。
「俺達も今では違和感ないけど、ここに来たばっかの頃はそれはもう別世界かと思ったよ」
「お前のその感覚は普通だ。可笑しくねぇよ」
「僕の家は貧乏で奨学金でここに通ってるからこの光景は未だに慣れないよ」
「奨学金…」
この学園には金持ちしかいないと思っていたが、葵みたいにちゃんと努力して入学した人もいることを改めて思い知らされた。
自分だけが庶民だと思っていたから少し安心したが、裏口入学のことは絶対に言えないと思った瞬間でもあった。
「皆は何にすんの?」
「僕ナポリタンにしようかな」
「俺はCランチ」
「俺も」
「リカは決まった?」
「まだ。……未空は?」
「俺はSランチ!」
「S?何それ?」
「スーパーデラックスランチって言うんだよ」
「またの名を未空スペシャル」
「は?」
「つまり未空のために開発された未空のためだけのランチってこと」
「……未空って何者?王様?」
未空のために開発されたメニューってどんだけだよ。
「んー…似たようなもんかな。でもどっちかと言うと家臣みたいな?」
「家臣ではないと思うけど」
「似たようなものだけどな」
「ふーん…」
やっぱり金持ちだからか。
そう勝手に解釈して再びメニュー選びに専念する。
「リカも一緒のにする?スゲー美味いよ!」
「遠慮しとく」
結局、俺はオムライスを注文した。