歪んだ月が愛しくて1
「それでちゃーんと綺麗に撮れたらこれを覇王様に送るんだぁ」
「は?」
「あ、でもどうしよっかな。君を甚振るのは決定事項だけど君の誠意次第では覇王様にこれを送るのは見送ってあげてもいいよ?」
ああ、イライラする。
どうしよう、無性にぶっ飛ばしてぇ。
……あれ?俺ってこんなに耐え性なかったっけ?
「君が生徒会を辞めるんだったらね」
ブチッと。
その瞬間、俺の中で何かが切れた。
「勿論僕のことは話しちゃダメだよ。自分から生徒会を辞退するって言ってもらわ…「いい加減黙れよブス」
「っ!?」
態と挑発すれば月は面白いくらい食い付いた。その顔マジで傑作。
「この僕に二回もブ、ブ……もういいっ!これ以上お前と話してたら僕まで不細工になっちゃう!僕は覇王親衛隊を代表して今からお前に制裁を加える!さあ皆出番だよ!」
その言葉を合図に男達は待ってましたと言わんばかりにジリジリと距離を詰める。
「あーあ、大人しく月ちゃんに従ってればいいものを…」
「お前バカか?」
「マゾなんじゃねぇのコイツ?」
無意識に口角が上がる。
笑いを堪えようとすると肩が躍ってしまう。
顔を見られないよう俯くと、男達は強気な態度を崩すことなく愉しそうに嗤っていた。
その姿はまるで獲物を前にした獣のよう。
「叫びたきゃ叫んでもいいんだぜ」
「ま、誰も助けには来ねぇけどな」
「残念でしたぁ〜」
男達は一歩ずつ歩み寄る。
「お前にゃ何の恨みはねぇけど俺等の雇い主様がお怒りでよ」
「恨むんならお前を見捨てて他のダチを選んだ風魔と聖学に転入して来た自分の不運を恨むんだな」
また一歩、一歩と、男達が近付いて来る。
狩りを楽しむ獣の如くその目をギラつかせて。
俯いたまま何も言わない俺を男達の目には恰好の獲物に映っていることだろう。
……でも、
「ま、そのお陰でこっちとしてはオイシイ思いさせてもらってっけどな」
「あははっ、違いねぇ!」
「……み、ね…」
「あ?何か言ったか?」
俺の小さな呟きに男達が眉を寄せる。
ニヤついた表情を消し獲物である俺を凝視する。
脳裏に過るのは黒と赤の世界。
(久々だな、この感覚…)
獲物は真っ直ぐに顔を上げてその爛々とした瞳に獣を捉える。
その瞳は欠片も獣を恐れておらず、
「―――見捨てられたのはどっちかな?」
爛々とした瞳で小動物の喉元を狙っていた。