歪んだ月が愛しくて1
赤が舞う。
赤が飛び散る。
赤が視界を覆う。
次々と仲間が地に伏せていく中、ただ黙って見ていることしか出来なかった。
目が逸せない。
いや、逸らしてはいけない。
逸らしたら最後、次に捕食されるのは―――。
普通じゃない。
どう考えても普通の高校生とは思えない。
その瞳には底知れぬ深い闇が窺えた。
どう言う生活をしたら、どう言う経験をしたらそうなるのか…。
分からない。
理解出来ない。
理解したいとさえ思えない。
何故なら彼は…、
「あがぁ、あ゛ぁぁあああ!!」
「も、もう、ゆゆ許し…っ!!」
こんな…、何の感情も映さない冷徹な瞳で何度も何度も拳を振り下ろす。
相手に意識があろうとなかろうと関係ない。
まるで地を這う虫を踏み潰すように何の躊躇いもなく何度も。容赦なんて毛ほどもない。
ガタガタと身体の震えが止まらない。
怖い。怖い。
目の前にいる彼の全てが恐ろしい。
「お前は、まだだ」
「っ!?」
その声に、その目に、一瞬呼吸が止まった。
悲鳴すらも許されない。
「や、やめっ、」
「う、ぐぐあがぁああああ!!」
怖い、怖い、怖い怖いこわいこわいこわいこわいっ!!
それ以上の感情が抱けない。
パタっと、仲間達の動きが止まった。
ピクリともしない。
それを見ても一切の表情を変えない少年は無表情のまま俺に視線を移す。
「、」
悪寒が身体中を這いずり回る。
ああ、次は…、
―――俺だ。