歪んだ月が愛しくて1
「未空!」
ヨージと裏庭に向かおうとした時、突然のんちゃんに呼び止められた。
「のんちゃん?」
「待って未空!もしかして立夏を捜しに行くの?」
「うん。スタートしてから結構経つのにまだ帰って来ないから心配で…。頼稀もだよね?」
のんちゃんは無言で首を縦に振る。
「……心配だよね。だから俺捜して来るから」
「俺も行かせて!」
「え?」
俺の言葉にのんちゃんが身を乗り出して被せて来た。
「お願い未空!」
「え、でも…」
「頼む!」
「ちょ、ちょっと!のんちゃん落ち着つこうよ!」
のんちゃんの不安な気持ちはよく分かる。
俺もリカが帰って来ないだけで尊に泣きついたくらいだ。
でも今ののんちゃんはいつもと違って周りが全然見えていない。
もし万が一リカや頼稀の身に何かあったらきっとのんちゃんは今以上に取り乱すに違いない。
そんなのんちゃんを一緒に連れて行くわけにはいかなかった。頼稀にも怒られそうだし。
俺はどうにかしてのんちゃんを落ち着かせてこの場に留まってもらおうと考えていた時、不意にヨージが俺達の間に割って入って来た。
「まあまあ、落ち着けって。君が焦ったところで友達は帰って来ねぇぞ」
「でもっ」
「それに今の君を連れて行くわけにはいかねぇな」
「な、何でですか…?」
「周りが見えてねぇのよ。だからダメ。何かあったら危ねぇだろう」
「自分の身くらい自分で守れます!俺は弱くない!」
「でも強くもない。足手纏いはいらねぇのよ」
「なっ!?」
「それに、いくら強くても男と女じゃ力の差は歴然としてるからな。―――ねぇ、佐々山希さん?」
「、」
グッと、下唇を噛み締めるのんちゃん。
そして険しい表情を隠そうともせずヨージを下から睨み付けていた。
「のんちゃ…「希っ!!」
するとそこに頼稀が現れた。
「頼稀!?」
走って来たのか頼稀は肩で息をしていた。
そんな頼稀に俺達はすぐさま駆け寄った。
「頼稀!今までどこにいたんだよ!?」
のんちゃんが頼稀に詰め寄って声を荒げる。
その表情は先程までのものとは違いどこか安心したように柔らかかった。
「そんなことよりっ、お前怪我は!?」
「は?け、怪我…?」
「何のこと?」と首を傾げる、のんちゃん。
正直俺にも頼稀が何を言いたいのか分からなかった。
「チッ、やっぱり罠だったか…」
そう言って頼稀は息を整えながら眉を顰めた。
「どう言うこと?罠って…」
「……嵌められた」
「嵌められた?誰に?」
「それは…」
頼稀は事の経緯を一から説明しようとしてくれたけど、今俺が聞きたいのはあの子のことだけだった。
「……ねぇ、リカは?」