歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
メリッと嫌な音がした。
人間の骨に減り込むような音。
でもいつまで経ってもその衝撃が訪れない。
その代わりに俺の身体を温かい何かが包んだ。
この温もり、この匂いは…。
嫌な予感がしてそっと目を開けると、そこには俺の身体を背後から抱き締める会長が険しい顔をして俺の頭を守るように腕を伸ばしていた。
「かい、ちょ…」
……う、そ。
何で、何で、
何かが地面に落ちた。
カラカラと、地面には金属バットが転がる。
「あ、あ…っ」
次第に月の顔が青褪めていく。
まさかと思い会長の腕を見ると制服の左腕だけが土や泥で汚れていた。
それだけで何が起こったのか容易に想像することが出来た。
「な、んで…っ」
何で、俺を庇ったの?
「……怪我、してねぇか?」
「、」
一瞬、言葉を失った。
「ど、して…」
「質問してんのは俺だ」
「お、れのことより、会長の方が怪我…っ」
「耳元で煩ぇ」
会長は態とらしく右手で耳を塞いだ。
「煩いじゃない!俺は…っ」
『…ごめん、シロ……』
「俺は、本気で心配してんだよ!」
「………」
蘇るあの日の光景。
無意識に身体が震えているのが分かる。
すると会長はそんな俺の変化に気付いて静かに声を掛けた。
「それだけ煩ければ問題ねぇな」
「、」
会長は怪我をしていない方の手で俺の頭を撫でた。
その表情と仕草にグッと口を噤んだ。
……まただ。
モヤモヤしたものが俺の中で渦巻く。
でもそんな心情とは反対に気付いたら身体の震えが治っていた。
「み、こと…様……」
月が会長の名前を呼ぶ。
するとそれまで俺を捉えていた黒曜石が冷たく尖った。