歪んだ月が愛しくて1
「あの、お、お怪我は…」
会長は月を見ようとしなかった。
寧ろ視界に入れないようにあえてそうしているようにさえ思えた。
「テメー…親衛隊か?」
「は、はい!僕は月と申しまして覇王親衛隊の幹部で未空様専属のリーダーを…「コイツに何をした?」
会長は月の言葉を遮って地面に転がる金属バットに手を伸ばす。
「べ、別に、何も…」
「俺にはこれでコイツを殴ろうとしたように見えたが?」
金属バットを手にした会長は月にそれを見せ付けるかのように右手で何やら遊んでいた。
「ま、まさかっ、僕がそんなことするわけないじゃないですか!」
月の白々しい台詞に内心イラッとする。
「お陰で俺は怪我したんだがな」
「そ、それは、偶々当たってしまって…っ」
「偶々?」
「はいっ!素振りをしていたら突然飛び出して来るものですから僕だって吃驚しましたよ!ですから間違っても殴ろうとしたわけでは…」
流石にその言い訳は無理があるだろう。
一部始終を見ていなくても素振りは苦し過ぎる。
「そうか」
それだけ言って会長は右手を大きく振り上げた。
その手にはキラリと光る金属バットが握られていた。
「……会長?」
「お前は黙ってろ」
「黙ってろって…」
何をするつもり?
「な、にを…」
「何を?テメーがコイツにしようとしたことを俺がお前にやってやるって言ってんだよ」
「み、尊様がそんなことするはずが…っ、冗談ですよね!?」
「これは単なる素振りだ。故意じゃねぇ。あくまでそこにお前がいたってだけの話だ」
「そんなっ、」
「それに、テメーも俺にやったよな?」
「、」
マズい!
そう思った時には既に遅く、一歩一歩と後退る月に向かって会長は躊躇うことなく金属バットを振り下ろした。
ダメだ。それだけはやっちゃいけない。
「会長っ!!」