歪んだ月が愛しくて1
「俺のことよりも会長は…」
「見ての通りだ」
「病院行こう!あ、救急車呼んだ方がいい!?」
「バカか。大袈裟なんだよ」
「どこが大袈裟なんだよ!あんな音したんだぞ!絶対骨折れてるって!」
会長の左腕を指差して指摘する。
すると会長は「あー…」とか暢気な声を上げた。
「それなのに、何で、他人事なんだよ…」
「もう痛みはねぇからな」
その顔は正に痛み感じていない人の顔そのものだった。
でも、
「嘘だ」
そっと会長の左腕に指を這わす。
すると会長はピクッと眉を顰めて初めて痛みを露わにした。
やっぱり…。
「……すいませんでした」
「は?何でお前が謝んだよ?」
「だって、その怪我は…」
『…ごめん、シロ……』
あの時、俺を庇って怪我をした会長を見てあの日の光景が蘇って来た。
自分のことよりも他人を優先する会長があの日のアイツと重なって見えて途端に怖くなった。
「ごめんっ」
またあの日を繰り返してしまったら…。
そう思うだけで胸が痛くて呼吸が苦しくなる。
蘇るのはかつての悪夢。
いや、今もまだ蝕まれている。
消えない。
あの色がちらつく。
「……何て顔してんだよ」
その声にゆっくりと顔を上げる。
「お前、そう言うのやめろ」
「そう言うの…?」