歪んだ月が愛しくて1



「……おい、それはどうするつもりだ?」

「それ?」



会長が俺の後方を指差す。
何のこと言っているのか分からず首を傾げながら後ろを向くと。



「あ…」



そこにいたのはさっきの子猫だった。
いつの間にかいなくなったと思ったらそんなところにいたのか。
俺が足を止めると子猫はにゃあと鳴いて俺の足首に擦り寄って来た。



「お前の猫か?」

「まさか」

「その割には懐かれてるな」

「そうですか?」



俺が子猫を直視出来ないでいると目敏い会長はすかさずそれについて疑問を投げ掛ける。



「嫌いなのか?」

「……いいえ」

「台詞と行動が伴ってねぇんだよ」

「嫌い…、じゃないです。ただ苦手で…」

「そのくせそいつを庇ったのか?矛盾してんな」

「あ、れは…」



あれは子猫を庇ったわけじゃない。

ただ動けなかっただけ。子猫の姿に過去の自分を重ねてしまったから。



「それともそいつがいたから動けなかったのか?」

「……そんなところです」

「………」



そう言うことにしておこう。
その方が何かと都合が良い。
余計なことを言うと何かと詮索されそうだし。



「あれ、この子…」

「どうした?」

「いや、目が…」

「目?」



白い毛色に真紅の瞳だと思った。
でもよく見ると片方が紅色でもう片方は蒼色だった。



「オッドアイか」

「オッドアイ?」

「左右の虹彩色が異なる状態のことだ。白猫には特に多く現れるらしい」

「……やけに詳しいですね」

「実家で飼ってる」

「え、猫を?意外…」

「何が?」

「会長の場合猫より犬派かと。ドーベルマンとか飼ってそうなイメージだったから」

「何匹かいるぞ、番犬としてな」

「本当期待を裏切りませんね」


< 330 / 552 >

この作品をシェア

pagetop