歪んだ月が愛しくて1
「にゃあ」
子猫は俺の足元に纏わり付きこちらを見つめて何かを訴えていた。
「俺、何も持ってないのに…」
「……撫でてやれよ」
「え?」
「コイツもそれを望んでる」
「………」
その言葉に背中を押され恐る恐る子猫に手を伸ばした。
「っ、」
伸ばした手に子猫が頭を擦り寄る。
俺の手に顎を乗せたり耳を押し付けて来たり。
されるがまま状態の俺はどうしていいものか戸惑っていた。
「あの、この後どうすれば…っ」
すかさず会長に助けを求めると。
「ふ、くく…っ」
何故か笑われた。解せん。
「な、何笑ってんだよ…」
「いや、お前面白いな。ウケる」
「勝手にウケんな!こっちは面白くも何ともねぇわ!」
「あからさま過ぎて笑える。やっぱビビりだなお前」
「ビビってねぇよ!こっちはマジで困ってるから聞いてんだよ!」
「顎」
「あ、顎…?」
「いいから撫でてみろ」
その言葉を信じてそっと子猫の顎に触れて何度か撫でてやると子猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
「えっ、何?嫌がってんの?」
「バーカ、喜んでんだよ」
「へ?喜んでる?」
「猫は気持ち良い時や甘えたい時にそうやって喉を鳴らすんだよ」
「そう、なんですか…」
知らなかった…。
「お前猫に触るの初めてか?」
「猫だけじゃなくて生き物に触ること自体初めてだよ」
「マジか」
本物には、ね…。