歪んだ月が愛しくて1
元々生き物に対して「可愛い」と言う感情はあった。
でもテレビに映るそれと実際に触った感想とでは可愛さのレベルが全然違った。
「……可愛い」
自然と言葉が漏れる。
会長が言うように俺に懐いてくれてるみたいだから尚更そう感じるのかもしれない。
「さっきまでビビってたくせに」
「だ、誰が…っ」
フッと鼻で笑う会長にムキになって言い返す。
「ビビってなんて…」
はっきりと否定することは出来なかった。
白と赤の容姿が安易に触れることを躊躇させた。
(ごめんな…)
今でもあの色は怖い。
でもそれはこの子にとって失礼だと思うから。
「にゃー」
触って、触ってと。
愛らしく鳴いて求める姿に過去の自分を重ねた。
離しちゃいけないと思った。
俺が助けを求めて伸ばした手をアイツが気付いてくれたように俺もこの子を拒絶しちゃいけない。
「……ビビってないけど、もう怖がりません」
異なる二つの瞳はどの世界でも異色だ。
血のような真紅の瞳から“化け物”と呼ばれ敬遠されて来た俺もこの子のように異色な存在だったように。
「連れて行くのか?」
「え、」
「首輪がない」
そう言われて首元を確認すると確かに首輪は付いていなかった。
「野良猫ってこと?」
「飼い猫なら首輪くらいすんだろう。それがねぇってことは野良か…、その割には毛並みがいいな」
「まあ、どっちにしろ連れて行かないけどね」
「何故だ?」
「だって俺動物初ですよ。ちゃんとした知識もないのに可愛いって理由だけじゃ飼っちゃダメでしょう?それにもしこの子に飼い主がいたとしたら俺がこの子を連れて行ったら寂しいと思うから…。だから連れて行かない」
「………」
連れて行けない。
この子を待ってる人がいるなら尚更。
それに俺にはこの子を連れて行く資格がない。
大切なものを手放してしまった俺には…。
「はぁ…」
「何溜息吐いてんの?」
「そう言うところがお人好しって言ってんだよ」
「だから違うって!」