歪んだ月が愛しくて1
頼稀Side
未空がスマートフォンから耳を外したタイミングですかさず御幸陽嗣は問い掛ける。
「電話尊からだろう。何だって?」
「リカが見つかったって!良かったぁ!」
先程までの強張った表情が嘘のようにパァッと笑顔を咲かせる未空に全員が安堵した。
「さっすが王様、本当に見つけちまうとはな。猿並みの嗅覚か?」
「え、猿って鼻利くの?」
「それを言うなら犬だろう…」
じゃれ合う覇王の2トップバカを横目に希が俺の肩に寄り掛かる。
「良かった…」
「ああ、そうだな」
3人には全てを話した。
希を人質にされたこと。それで俺と立夏が別行動する羽目になったこと。
だからこそ希は人一倍立夏のことを心配していたし、自分のせいだと責任も感じていたことだろう。
こんな風に人の前で甘えるのも無理はない。俺としては普段からそうして欲しいくらいだが。
そんな希の頭を優しく撫でて安心させてやる。
「のんちゃん」
するといつもと違う希の様子に気付いた未空が優しく声を掛ける。
「リカね、電話越しでのんちゃんのこと凄く心配してたよ。どこにいるのか確認してって血相変えた声で」
「立夏が…」
「リカのことはもう大丈夫。尊が責任持ってちゃんと連れて来てくれるから安心して。だからのんちゃんは笑って?リカが帰って来た時にのんちゃんがそんな落ち込んだ顔してたら何かあったんじゃないかって心配すると思うからさ」
「お人好しの心配性だからな、アイツは」
「そ、だね…。これ以上立夏に心配掛けられないよな。よーし、立夏が帰って来たら思いっきり抱き締めてやろう!」
「それはダメ!リカは俺のなの!」
「今日くらい譲れよ!」
「嫌だ!」
「その前にお前のでもねぇよ」
希の顔にいつもの笑顔が戻った。
いつもは喧しいだけのコンビだが今日くらいは未空の喧しさに感謝だな。
「それで、りっちゃんに怪我は?」
「怪我もないって!本当リカが無事で良かった!」
「怪我がねぇってのは何よりだけどよ。だったらお前が見た男達は何だったんだよ?」
「知らね。リカとは関係なかったんじゃねぇの?」
「若しくは…」
「若しくはって?……ん?」
「………」
御幸陽嗣の視線を感じる。
若しくは…、なんて白々しい。
3人に全てを話したとは言ったがそれはあくまで俺が見たところまでだ。
多少嘘も交えたが立夏の正体を知っている俺としてはその先の展開まで容易に想像することが出来た。
やり過ぎていなきゃいいが正直それに関しては信用ならない。
何故なら立夏は喧嘩が出来ないわけじゃない。寧ろアイツの得意分野だ。ただ自分からは喧嘩を売りたくない、それだけだ。
その理由は無闇に火種を撒きたくないからと、頭に血が上った時に自分の力を制御する自信がないからだ。一度制御を失えばアイツはその力が尽きるまで手当たり次第に破壊し尽くすだろう。そのせいで立夏は大切なものを…。
だからこそ余計な詮索を避けるためにも男達と接触したことは知られたくなかった。神代会長と接触した時点でその願いは絶たれたが。
(邪魔だな…)
覇王の存在は厄介だ。
覇王の影響力、権力。
何より手が出し難いのが難点。
そしてこの男、御幸陽嗣。
4人の中で最も立夏に近付けさせたくない人物。
この男が傍にいても立夏には何のメリットもない。寧ろデメリットの方が多い。
「あ、作田」
「柵な」
まあ、それは覇王全員に言えることがだ。