歪んだ月が愛しくて1



「ここって…」

「学園の西側だな」



俺達は西側の外壁裏まで来ていた。
神代会長の指示でこの巨大な学園都市を覆う外壁付近を調査することになった未空達に俺と希が同行したのだ。

未空達の目的は侵入者の足取りを掴むこと。
でも俺の目的は別にある。
本来なら希の無事が確認出来たと同時に立夏の元へ戻るか、若しくは侵入者の侵入経路を明らかにするところだが、今回の場合は相手が親衛隊絡みと言うこともあり奴等のことは立夏に任せて俺は侵入者に関する情報収集に向かおうと思っていた。
後は時間を見計らって立夏に負かされた連中を回収するだけと思っていたがまさかここで先を越されるとはな。
一応アゲハさんにはメールして連中の回収を頼んだが恐らく間に合わないだろう。
立夏と神代会長が接触したとなると神代会長の方で連中を回収するだろうからな。
出遅れたとなると立夏信者のアゲハさんが黙っているはずがない。
奴等のことを報告すればきっとアゲハさんは害虫駆除に出向くだろう。
当事者は勿論のことそれに関わった全ての人間を許さない。アゲハさんはそう言う人だ。
しかしこの場に覇王がいると言うことは奴等に関する情報を共有しなければならなくなる。
それは中々面倒臭いことで、アゲハさんが動くことで立夏との関係を連想されるのだけは避けたかった。
俺とは違いアゲハさんが“B2“の総長であることは公にしていないからな。
何にせよ覇王のせいで計画が全て水の泡だ。
折角覇王に気付かれる前に片付けようと思ったんだが。



それならどうするか。



決まってる。

覇王に先を越された時点で選択肢は一つだけ。



「どっから入って来たのかな?」

「虱潰しに探すしかないんじゃない?」

「そいつはどうかな…」



俺に残された選択肢は覇王の動向監視。

下手に動かれるのも面倒だし何より気になるのは…。



「どゆこと?」

「いんや。何となく」

「は?意味分かんねぇんだけど」

「だってよ、俺が適当にこっち方向に歩いてても誰も何も言わなかっただろう?」

「更に意味不明」

「………」



御幸陽嗣。

どこまで気付いてんだコイツ…。


< 337 / 552 >

この作品をシェア

pagetop