歪んだ月が愛しくて1



場所は変わって中央棟5階の生徒会室。
それぞれがいつもの定位置に座り頼稀と希は俺の隣に座って九澄先輩の帰りを待っていた。



そこへガチャッと音を立てて生徒会室の扉が開いた。



「お待たせしてすいません。色々と手間取りまして」



保健室の前で九澄先輩と別れる直前、会長は九澄先輩に何かを託していた。
その“何か”は分からないが俺達に聞こえないように話していたと言うことは詮索されたくない話なのだろう。



「座れ」



九澄先輩は迷うことなく陽嗣先輩の隣に座った。
これもいつもの定位置だ。



「お前等が気になってるのはこれか?」



全員が揃ったところで会長は話を切り出した。
アームスリングで吊らされギブスで固定されている左手を頭上に掲げて淡々と言い放つ。



「その怪我…」

「全治1ヶ月だそうだ」

「1ヶ月?それで?」

「ヒビが入っただけだ。大したことはない」

「……本当に?」

「ああ。だからいつまでも辛気臭ぇ面すんな」



そう言って会長の大きな手が俺の頭に乗る。



「……ガキ扱いすんな」

「実際ガキだろうが」



怪我してなきゃ一発お見舞いしてやるのに…、クソ。



「ふーん、ヒビね…」

「何だ?」

「いんや、べっつに。ただ全治1ヶ月の割には大層な処置だなって思っただけよん」

「フン、九澄が余計な気回してうちの人間を呼んだせいでな」

「聞き捨てなりませんね。貴方のためを思ってやったことですよ」

「それが余計なんだよ」

「全く素直じゃありませんね」

「で、誰にヤられたんだよ?その怪我」

「恐極」

「え、恐極って…、まさか覇王親衛隊の…?」

「あー…確かそんな名前の奴もいたな」

「………」



恐極の名前が出た途端、陽嗣先輩と九澄先輩は微妙な表情を浮かべた。

でもこの男だけは違った。



「3年D組の恐極月。覇王親衛隊幹部で…「俺の」



誰かが頼稀の言葉を遮る。



「俺んとこのリーダーやってる奴、多分…」



未空だった。


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