歪んだ月が愛しくて1



「その恐極が立夏を襲った。幸いコイツは無傷で済んだが…」

「俺が無傷なのは会長が庇ってくれたからです。だから会長の怪我は俺の…」

「おい、まだそんなこと言ってんのか?」

「だって本当のことだろう!」

「煩ぇ。それ以上ぐだぐだ抜かすなら…」

「リカ!」



不意に未空は会長の言葉を遮って俺の名前を呼んだ。
いや、叫んだと言った方が正しいかもしれない。



「ごめん!リカが狙われたのは俺のせいだ!」



俺の名前を叫んだ瞬間、未空は素早くソファーから立ち上がり俺に向かって深々と頭を下げた。



「えっ、は…」



訳が分からん。



「俺が恐極を野放しにしてたからっ、だからアイツは調子に乗ってリカのこと襲ったんだ!」

「……待って、意味が分かんない。何で未空が野放しにしてると調子に乗るわけ?そもそも調子に乗ったからって何で俺に喧嘩売って来るの?」

「それは…」

「野放しにしてんのは他の3人も一緒だろう」



頼稀の言葉に未空はバツが悪そうに顔を歪めた。
反対に未空以外の覇王3人は澄ました顔で頼稀を見つめていた。



「……どう言うこと?」



俺が尋ねると未空の代わりに答えてくれたのは頼稀だった。



「覇王親衛隊が非公認って言うのは前に話した通りだ。だから覇王親衛隊には義務と規制がない。つまり覇王は覇王親衛隊を抑える権限がないってことだ。言い換えればこれまでどんなことがあっても見て見ぬふりを決め込んで来たんだよこの連中は」



棘があるな。

まあ、それは今に始まったことじゃないが。



「だから奴等が調子に乗るんだよ。自分達が何やっても覇王は一切関与して来ないからな。今回の件もお前に手を出したところで覇王は介入して来ないと思ったんだろうが…」

「思惑が外れて生徒会長の鉄槌を食らう羽目になったってことか」

「そう言うことだ」

「成程…」



通りで月が“B2”だけを警戒してたわけだ。



「まあ、実際何があったのかはお前にしか分からねぇけどな」



……その顔。

分かってて言ってるだろう。

こっちに丸投げすんなよな。



「その前に、未空」



俺が未空の名前を呼ぶと、未空は頭を下げたままビクッと肩を揺らした。



「いつまでそうしてんだよ。頭に血上るよ」

「……リカが許してくれるまで」

「は?」



許す?



「何を?」

「な、何をって…。俺が恐極を野放しにしてたから、だからリカが…っ」



ああ、そのこと。



「いいよ、別に気にしてないから顔上げて」



すると未空はバッと顔を上げた。



「何で!?」



何が?


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