歪んだ月が愛しくて1
「気にしてないって何で…、何でリカはそんな簡単に…」
「何でって言われてもな…、別に未空が俺を襲わせたわけじゃないじゃん。それなのに未空を恨むのって筋違いじゃない?それに月が未空専属部隊のリーダーってことも知ってたから何か今更って感じなんだよね」
「……は?」
「あ、もしかして知らないと思ってた?ごめん、本人から聞いてた」
「は……、はぁぁあああ!?」
そんな大声出さなくても聞こえてるよ。
「そんな驚くこと?」
「驚くよ!だって俺、本当は…っ」
キュッと、未空は唇を硬く結ぶ。
その両手は硬く握り過ぎてプルプルと小刻みに震えていた。
「本当は?」
「っ、リカには、知られたくなかった…」
「え、」
途端、未空は再び頭を下げた。
「頼稀が言ったことは本当なんだ。俺達が親衛隊を野放しにしてたから…。もっとちゃんと考えて行動しなくちゃいけなかったのに、でもリカと一緒にいたいって気持ちが先走って面倒なことから目を背けて後回しにしてた…」
目を背けて、か…。
「ごめん!本当はそんなこと言える立場じゃないけど、でもやっぱりリカにだけは幻滅されたくなくてずっと言えなかった!」
「………」
「自分勝手でごめん!」
一々大袈裟だと思う。
そんなこと一々気にしなくてもいいのに。
「本当に、ごめん…」
……仕方ない。
「未空」
「な、に…っ」
前置きもなく未空の頭上に手刀を落とすと未空は痛みで頭を押さえてしゃがみ込んだ。
その目元には薄っすらと涙が溜まっていた。
「しつこい」
ズバッと。
「許す許さないじゃなくてそもそも怒ってないから。気にしてるのは未空だけ」
「そんなこと…っ」
チラッと会長達に視線を送る、未空。
助けを求めてるのか何なのか知らないがこれ以上の余計な押し問答は時間の無駄だ。
「俺は誰のせいとかそんなこと気にしてない」
どうでもいい。
寧ろ親衛隊の狙いが俺で良かったとさえ思う。
「ただ…」
もし本当に希が襲われたら、俺は…、
『…ごめん、シロ……』
……何をするか分からない。
スッと視線を横にずらして希を見つめる。
「希が無事で、本当に良かった」
照れ臭そうにはにかむ希と目が合う。
その間で頼稀も満更でもないって顔をしていた。
「未空もそう思うだろう?」
「それは、そうだけど…」
「けどじゃない。それでいいんだよ。それに心配するなら会長の心配をしてあげて」
「………」
恐る恐る視線を上げる未空は何か言いたげな表情で会長を見つめていた。