歪んだ月が愛しくて1



「幻滅だってしない。前にもそう言ったじゃん」

「……うん」



未空は小さな声で「覚えてるよ…」と言った。



幻滅なんてするはずがない。

そんなこと出来るわけがないんだ。



「……未空は何も悪くない」

「え、」



確かに頼稀が言うように覇王は碌でもない連中かもしれない。
でも今回に限っては完全に俺のせいだ。
覇王のせいでも、未空のせいでもない。
希が巻き込まれたのも、会長が怪我をしたのも、全部俺のせい。



「未空のせいじゃないよ…」



目を背けていたのは未空だけじゃない。



『…ごめん、シロ……』



俺だって、人のこと言えない。



「リカ…」



俺の名前を呼ぶ未空はギュッと眉間に皺を寄せて俺を見つめる。
そんな未空の様子に苦笑して未空の鼻を指で押した。



「気にしなくていいよ」

「、」



だから言った。

未空を安心させるために、これ以上悩まなくてもいいように。



「俺のことなんか気にしないで」



ただ笑ってて。

アイツと似たその笑顔を曇らせないで。



「………」



でも未空はずっと黙ったまま顔を伏せていた。
他の覇王3人もバツが悪そうな表情でそれぞれが想いに耽っているように見えた。



「それに今更じゃん。陰口も呼び出しもリンチもそんな大差ないよ」

「リ、リンチ!?」



……あ、しまった。

そう思った時には既に遅く、未空は勢い良く顔を上げて俺の両肩を掴んで激しく揺さぶった。



「リカ、リンチって何!?そんな話聞いてないよ!?」

「あー…言ってなかったっけ?」

「だから初耳だってば!」



言い方を間違えた。
本当のこと言ったらこうなるのは目に見えてたのに失敗した。



「……どう言うことかな、ふーまくん?」



目の前の頼稀に陽嗣先輩はニヒルな笑みを浮かべて問い詰める。



「くん付けしないでもらえます?気持ち悪いんで」

「おうおう、話を逸らすのが下手だねぇ。お前それでも幹部か?」

「試してみるか?」



2人が言い合いを続ける中、会長の鋭い眼光が俺に向けられる。



「……何?」

「………いや」



いやって。

言いたいことがあるならはっきり言ってよ。



「頼稀どう言うことだよ!?さっき聞いた時はリンチなんて一言も言ってなかったじゃん!」

「あー…」



ヒシヒシと感じる、頼稀の視線。



……ごめん。

謝るから怒んないで。怖いんで。



「立夏くん、風魔くん、詳しく説明して頂けますよね?」



有無を言わさぬ状況下の中、5人の視線が俺と頼稀に注がれた。















(余計なこと言いやがって)

(すいません…)


< 350 / 552 >

この作品をシェア

pagetop