歪んだ月が愛しくて1
平然と澄ました顔で嘘が吐ける頼稀は詐欺師に向いていると思う。
「―――では、その男達を倒したのは風魔くんなんですね?」
「はい」
一連のシナリオはこうだ。
まず俺と頼稀が男達と接触して頼稀が男達を倒した後、希のことがあって二手に分かれて希を捜しに走る。
そこで俺が月と鉢合わせし金属バットで攻撃されそうになったところを会長に助けてもらい逆に会長が怪我を負ってしまったと言う内容だ。
「相手は15人もいたんですよね?本当に君1人でその者達を制圧したんですか?」
「だからそう言ってるじゃないですか」
(白々しいな…)
これも全て頼稀が考えてくれたことだ。
俺の正体がバレないように色々と動いてくれているようだが…。
『守らせろよ俺にも…。少なくともここにいる間くらいは』
そう言ってくれた頼稀には申し訳ないが、俺は頼稀やアゲハに迷惑を掛けてまで正体を隠すつもりはない。
もし万が一正体がバレたらその時は―――。
でも今はまだ口に出してはいけないと思う。
それを言ってしまえたら気持ちが楽になるんだろうが、そんな道を選ぶために態々ここに来たわけじゃない。
俺がここに来たのは兄ちゃんが望んだ高校生活を無事に終えて卒業するため。そのために文月さんの支配下に留まることを決めた。不本意だが。
「流石だな」
「……どうも」
会長もあのことには一切触れなかった。
あんな無茶苦茶な喧嘩して言い訳出来ない証拠まで目の前にあったのに、会長は俺を追及するばかりか俺と頼稀の嘘に口裏を合わせてくれている。
理由は分からないが今はそれに甘えるしかない。
ここでの平穏な生活を確保するためにはそれが一番利口な選択だ。
「めっずらし。王様が素直に他人を褒めるなんて」
「明日は雪だね」
「おい、人を何だと思ってやがる」
「「え、王様」」
「沈めんぞ」
自分で言ってたくせに。
「………」
一方、納得してないって顔の九澄先輩。
頼稀が考えたシナリオを疑ってるのか、それとも…。
「まあ、流石は“B2”ってとこか」
……え?
ちょっと、待って。
「“B2”って…」
「あ、“B2”って言うのは暴走族の名前だよ」
その言葉にギョッとした。