歪んだ月が愛しくて1
「ま、まさか…。俺がそんなこと出来るはずないじゃん」
「………」
「勝手に倒れたんだよ。ほら、床が濡れてるだろう」
「………」
「……何?」
「別に」
別にじゃねぇよ。
納得したのかしてないのかはっきり言えや。
「我孫子さん!」
「我孫子さんしっかりして下さい!」
「テメー等、我孫子さんに何しやがる!?」
「何なんだテメー等!どっから沸いて来やがった!」
未空が殴った相手は俺が唾を吐いた男だった。
そしてもう1人、俺に殴り掛かって来た男は頼稀が撃退してくれたようだ。
その男は背後からの攻撃に対応しきれずもろに一撃を受けて床で伸びていた。
残りの男達は憤慨した様子で未空と頼稀に詰め寄ろうと手を伸ばすが、頼稀はまるで汚れを払うかのようにその手を払い落とした。
「別に名乗るようなもんじゃねぇよ。強いて言うなら正義の味方?」
「ふっふふ、何を隠そう俺達は“藤岡立夏防衛隊”だ!」
「………は?」
防衛隊?
「隊長、本人が呆けてまーす」
「リカ助けに来たよ!もう大丈夫だからね!」
ポンッと、俺の頭に手を乗せる未空は俺を安心させようと歯を見せてニカッと笑った。
意味の分からない防衛隊やらに巻き込まれて文句の一つでも言ってやろうと思ったのに。
「帰ろう、リカ!」
『シロ!』
……まただ。
アイツと被って見えるその笑顔に何も言えなくなる。