歪んだ月が愛しくて1
「“B2”が動くってことは裏で族が糸引いてんのかもな」
ボソッと、陽嗣先輩は独り言のように呟いた。
予期せぬ言葉に思わず反応した。
「ぞ、族って…」
その可能性は十分に考えられる。
ただそこに行き着いてすぐ考えるのを放棄した。
口に出さなかったのは関わりたくなかったからだ。
でもまさかこの人の口からそれを聞かされるとは思わなくて驚いた。
「その可能性はありますね」
「え、」
「うん。見た感じそれっぽかった」
「ぽいって…」
そこに行き着いたのは俺だけじゃなかった。
未空や九澄先輩は陽嗣先輩の意見に反論することなく素直に同調した。
「りっちゃんは侵入者と直接会ったんだろう。奴等のことで何か思い出したこととかない?」
「いや、特には…」
「リーゼントで長ラン着てなかった?」
「口に葉っぱ加えて下駄を履いてませんでしたか?」
「いつの時代よそれ」
「漫画の見過ぎだ」
陽嗣先輩は俺に対して更に追及を続ける。
「何でもいいんだぜ。何か思い出せねぇか?」
「そう言われても何も…。それに今時暴走族とか古くないですか?昭和じゃあるまいしもう絶滅危惧種でしょう」
「ぜつ…っ!?」
その瞬間、陽嗣先輩は盛大に吹き出した。
「ぎゃあははは!絶滅危惧種って今時そう例えるかよ!暴走族なんかよりりっちゃんの方がよっぽど昭和っぽいじゃん!くくっ、マジでウケる!ああ腹痛ぇ!」
「わ、笑わないで下さいよ…」
流石に絶滅危惧種は言い過ぎたか。
「陽嗣、笑い過ぎですよ。立夏くんが困っているじゃありませんか」
「でも絶滅危惧種は面白かった!リカ可愛い!」
「だろう!中々の傑作じゃねぇの!」
全然嬉しくない。