歪んだ月が愛しくて1
「てかりっちゃんってそっち系の人嫌い?」
「そっち?」
「ぞーく、暴走族」
陽嗣先輩の突拍子のない一言に全員の視線が集中する。
「……何ですか、急に?」
「いやだってさ、族のこと絶滅危惧種とか言ってたじゃん。何か関わりたくないオーラ出てたし」
「そう?」
「そんなこと、ないけど…」
奴等に対する感情は嫌いなんてものじゃない。
憎しみとか、恨みとか、口に出すのは簡単だがそんな単語では伝えきれない。
ただ全ての暴走族を否定するつもりはない。
夜の街に足を踏み入れるのには何かしらの理由があるから。
『シーロちゃん♡』
俺の憎しみの対象は、あの男だけ。
「だよね。リカって差別とか嫌いそうだし」
「差別が好きな人っているの?」
「いると思いますよ。特にこのような場所では」
「聖学は特殊だからな」
「特殊?」
あれ?
そのフレーズ、前にどこかで聞いたことがあるような…。
「いーの、リカはそんなこと気にしなくて」
「……いいの?」
「いいの、いいの」
「立夏くんは転入して来たばかりですもんね。こちら側の事情に疎くても仕方ありませんよ」
「変なこと聞いて悪かったな」
「……いえ」
そっちから吹っかけて来たくせに何がいいのやら。
でも正直助かった。あのまま追及されていたら余計なことを言っていたかもしれない。
知られるわけにはいかない。
過去も、罪も、内に秘める獣も。
あの男に対する感情も。
―――まだ。