歪んだ月が愛しくて1
九澄先輩はパソコンから視線を外し爽やかな笑顔を俺に向けたまま。
「恐極はもうここにはいません。昨日付けで学園を自主退学しましたから」
サラッと。
本当にサラッと言い放った。
たい、がく…
たいがく、たいがく…、
「退学っ!?」
あれ以来姿を見せないからてっきり自室で謹慎してると思っていたがそう言うことだったのか。
「何で…」
「何で?決まってるじゃないですか、警告ですよ」
「警告?」
「立夏くんに…、覇王に逆らったらどうなるかその身を持って教えてあげたんですよ」
「、」
ぐらぐらと、体内が粟立つ。
もどかしさのせいで呼吸を見失いそうだ。
「俺の、せい…」
喉の奥がヒュッと小さく音を立てた。
「……立夏くんのせいではありません。仕掛けて来たのは彼の方なんですから」
「でもっ」
「それにいくら立夏くんが気に病んだところで彼は実際尊に怪我を負わせました。“神代”である尊をですよ。彼がやったことは決して許されることではありません。あの書き込みを見ても分かるように彼が立夏をどのように貶めようとしていたか手に取るように分かりますからね」
「それは、そうですけど…」
淡々と説明を続ける九澄先輩に何も言えなかった。
会長や俺のことを考えてくれたのは分かる。でも俺のせいで誰かの人生が狂ったらと思うと無性に怖くなった。