歪んだ月が愛しくて1



「つまりこれを掃除するのが僕等の役目と言うことさ」

「“B2”…」



白樺に聞こえないように小さな声で呟く。



「俺はな」

「頼稀だけ?」

「僕は寮長としてここに来たのさ。生徒の安全を守るのは寮長の役目だからね」

「成程」



あくまで“B2”とは無関係を突き通すわけね。



「で、どうすんの?」



心配なのは人質の彼、西川くん。



「正面から行きます?」

「あははっ、頼稀は短気だね」

「その方が手っ取り早いですから」

「………」



頼稀の言う通り無駄に時間を掛けるのは西川くんのためにもならない。
相手が単独犯なら尚のことだが。



「……反対」



でも相手が凶器を持っている以上確実な方法で西川くんを救出しなくちゃいけない。



「だったら他にどんな…「俺が囮になる」

「……は、」

「おやおや」

「君、何勝手なこと…」

「アゲハと頼稀はスキンヘッドの後ろに回り込んで他の4人を頼む。その隙に俺がスキンヘッドを何とかするから」



俺が小声で指示を出すとアゲハと頼稀は分かり易く顔色を変えた。



「……ふざけんな」



そう言ったのはやっぱり頼稀だった。



「自分が何言ってるのか分かってんのか?そんなこと出来るわけねぇだろう。自分の立場を考えろ。お前は覇王の一員で白…っ」

「分かってる」



ちゃんと分かってる。

でも今はそんなこと関係ない。



「アゲハ」

「何だい?」

「前に言ってたよな、“俺の望みを叶えたい”って」



一瞬驚いた表情を見せた、アゲハ。

その直後、アゲハは全てを理解したように苦笑した。



「おやおや、今それを持ち出すとはね」

「有効期限はねぇんだろう?」

「アゲハさん!アンタ何余計なこと言ってんですか!?」

「あははっ、ついね」

「ついじゃねぇ!」



今にも手が出そうな頼稀を横目にアゲハは穏やかな表情で俺に問い掛ける。



「それが君の望みなのかい?」



……分かってるくせに。

あえて俺にそれを言わせるとかどんだけ性格悪いんだよ。



まあ、乗ってやるけど。



「俺の望みは確実な方法で西川くんを助けることだ」



でも本当に性格悪いのは自分の立場を利用して彼等を黙らせた俺の方。



「仰せのままに、我が君」

「……チッ」



だって俺が望めば彼等はそれを叶えてくれると知っているから。





(さて、どうしてくれようかな…)


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