歪んだ月が愛しくて1



「駒鳥、こちらは終わったよ」

「さっすが」

「てか何で眼鏡外したんだよ?」

「だって外しとかねぇとすぐバレんじゃん」



俺が“藤岡立夏”だと。
そうなれば奴等に警戒されて人質の救出に余計時間が掛かったかもしれない。



「だからって安易にそう言うことしてんじゃ…」

「頼稀、お説教は後だ。ゴミ回収を頼むよ」

「……分かりました」



頼稀はムスッとした表情でどこかに電話を掛けた。
すると人垣の中から体格の良い男子生徒が数人現れて頼稀とアゲハにやられて気絶した男達を担いでどこかに連れて行った。
どこに連れて行くのかは分からないが頼稀に任せて置けば大丈夫だろう。



「き、君、大丈夫なの…?」



クイッと、白樺は俺の制服の袖を掴んでそんなことを言う。



「………」

「え、何、やっぱり怪我したの!?どこ見せて!」



そう言って白樺は血相を変えて俺の顔を覗き込む。



「あ、怪我はないけど…」

「ないけど?」

「……俺の怪我を気にするアンタが、何か意外で」



ちょっと吃驚した。

 

「っ!?」



途端、白樺がカァッと赤面する。
そして俺の制服の袖を掴んでいることに気付いて咄嗟に両手を後ろに隠して距離を取った。



「う、自惚れないでよ!バカ!」

「バカ!?」



誰がバカだ!

お前だけには言われたくねぇんだよ!



「な、何なの君っ!バカなの!?自意識過剰過ぎるんじゃない!?」

「お前な、言わせて置けば…「あ゛ああぁぁあああ!!!」



その声にハッと我に返ると、スキンヘッド男がナイフを振り翳してこちらに向かって走って来た。
その刃先は俺ではなく白樺に向けられている。
咄嗟に白樺を後ろに隠してスキンヘッド男の前に立ち塞がる。



「ふ、ふじ…っ」



白樺が叫ぶと同時に身体が動く。
使ってなくてもちゃんと身体が覚えている。
ナイフと共に伸びて来た手を払い、逆にその手首を掴んで手首を軸にスキンヘッド男の身体を投げた。



「立夏!」

「駒鳥!」



ダンッと、大きな音と少しの砂埃。
その衝撃でスキンヘッド男の手からナイフが離れた。



「ごめん、ナイフ回収すんの忘れてた」

「バカ!そんなことよりお前怪我はっ!?」

「怪我?ないない」

「ったく、心配させやがって…」



俺のことなんか心配なんてしなくていいのに…、なんて言ったらきっと怒られるんだろうな。



「連れて行け」



頼稀の指示でスキンヘッド男はどこかへ連れて行かれた。
そして頼稀は地面に転がるナイフを拾い上げ自身の制服のポケットに入れた。


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