歪んだ月が愛しくて1
隙を見て会長の腕の中から脱出する。
会長と向き合うように身体を反転させると驚いたことに会長の後ろには他の覇王3人も集まっていた。
「え、何で皆までいんの?九澄先輩も今日は戻らないんじゃ…」
そう言い掛けて言葉を閉ざした。
だって視界に入った彼等の表情が一目で分かるくらい怒っていたから。
「……何、やってんの」
その声色にツンッと冷たいものが背筋に伝う。
そこにはいつもの笑顔ではなく怒っているような険しい顔で俺を見据える未空がいた。
「自分が何をしたか、分かってる?」
でも彼等が怒る理由が分からなかった。
「分かってねぇよな、自分から人質交代申し込んじゃうくれぇだから。りっちゃんって本当何考えるわけ?」
……分からない。
「ちゃんと説明して」
でもこの状況を作り出したのが俺だと言うことは分かる。
俺の言動が、俺の存在が彼等を不快にさせていた。
この状況で俺に出来ることはなんだろう。
話を逸らす?……いや、そんなこと出来る雰囲気じゃない。
謝罪?でも何に対して?
それとも俺が彼等の前から消えていなくなれば彼等の怒りは治るのだろうか。
「……ごめん、戻るって行ったのに戻らなくて。でもそれには色々と事情が…「立夏くん」
俺の言葉を遮ったのは九澄先輩の声だった。
怒っていたはずの彼の表情には困惑の色が混ざっていた。
「とりあえず話は生徒会室の方で」
九澄先輩の提案に会長は小さく舌打ちをしていつかのように俺の手を掴んで歩き出した。
いつもなら振り解くなり抵抗するなりするところだが今の俺は会長に手を引かれるがまま黙って足を動かすことしか出来なかった。
ああ、気が重い。
足が重い。
「さて、駒鳥も巣に戻ったことだし僕達もそろそろ…」
「九條院様」
「ん?何だい?」
「……教えて、頂きたいことがあります」
久々に感じた。
息苦しいこの感覚。