歪んだ月が愛しくて1
俺は生徒会室に着くなり早々に謝罪した。
「……すいません、でした」
視線が痛い。無言が息苦しい。
先程よりも変な緊張感が胸の辺りを締め付けていた。
「立夏くん」
九澄先輩は真剣な表情で口を開く。
それだけで喉の奥がキリキリと痛んだ。
「立夏くんは何について謝っているのですか?」
「な、にって…」
皆が怒っている理由、そんなの。
「会長に帰って来いって言われたのに、帰らなかったから…」
思い浮かぶことを口に出した。
「他にはねぇの?」
スッと、陽嗣先輩が目を細める。
そう言われて自分が何か見落としていないかと考える。
「九澄先輩を連れ戻せなかったこと、ですか…?」
「は?」
「それとも九澄先輩が出てった原因そのものですか?すいません。俺、自分のことしか考えてなくて九澄先輩に不快な思いを…「違いますよ」
正に一刀両断。しかも清々しい笑顔で「それに不快にも思ってませんから気にしないで下さい」とまで言われてしまった。
「……じゃあ、もしかしてさっきのあれ?」
もうそれしか思い付かない。
「それしかねぇだろうが」
会長の低い声が肯定する。
……ああ、やっぱり。
彼等が怒っているのは俺のせいだった。
「……勝手なことして、ごめん」
「あ?」
「俺があんな作戦立てて無関係な人達を巻き込んだから…。人質にされた西川くんには怖い思いをさせて申し訳ないと思ってるよ」
「おい」
「俺、生徒会失格だよね。会長が辞めろって言うならやめ…「待て、何でそうなる」
会長の口調が一層強まる。
すると未空が痺れを切らしたかのようにバンッとローテーブルに手を付いて叫び出した。
「もうっ!リカのバカ!何でいつも他人のことばっかなんだよ!」
「少しは自分の心配したらどーよ?」
続けて陽嗣先輩が呆れた口調でそんなこと言う。
自分の、心配…?
「何で?」
分からなかった。
“自分の心配”をすることの意味が。
そして…、
「、」
「何でって…」
「マジ、かよ…」
「………」
彼等の強張った表情の理由も。
『貴様のせいで…』
あの日から俺はいらない人間になった。
それなのに“自分の心配”なんて出来るはずがない。
いや、する必要がない。
俺がどうなろうと誰にも関係ないし、誰も気に留めないし、誰も…―――、
「立夏」
会長の声に空気が引き締まる感じがした。
「何かあったら必ず俺に言え」
その台詞、前にどこかで聞いた気がする。
「前にそう言ったよな?」
……思い出した。
白樺に呼び出された時、そんなようなことを会長に言われたんだった。
「それなのに何でお前は連絡して来ない?何でお前が危ない目に遭ってることを第三者から知らされなきゃいけない?何のためのスマホだ?」
「それは…」
「俺等に迷惑が掛かるとでも思ったか?」
こくっと、小さく頷く。
スキンヘッド達は月を捜して聖学に来た。人質を取り凶器まで使って。
でも月はもうここにいない。だったら月の退学の原因を作った俺が出向くのが筋だし、一度男達とやり合ってる俺としては少しばかり因縁もある。
それに彼等には…、会長には頼れない。
だってそんなの迷惑以外の何者でもないじゃん。