歪んだ月が愛しくて1



校舎を出ると辺りは薄っすらと暗く中庭の街灯がぼんやりを光を放つ。
俺は九澄先輩の後について行きながら中庭を抜けて正門に向かって歩いていた。



「……あの、何で俺のこと指名したんですか?」



態々会長に許可を取ってまで。

そもそも何で会長に許可なんて………あ、会長だからか。



「僕のことをずっと捜してくれていたみたいだったので」

「あ…」



少しだけ身構えた。
でもまさか九澄先輩から話を切り出されるとは思わなかった。
無意識に足を止めて九澄先輩を見上げる。



「何かありましたか?」



何か…、なんて分かっているはずだ。

きっと九澄先輩には何もかもお見通しで、だからあえてそれを俺の口から言わせようとしていた。



「立夏くん」

「………」



真っ直ぐと見つめた先には木漏れ日のように微笑む九澄先輩がいた。
そんな九澄先輩を見たら何だか堪らなくなって、言いたいこととか全然纏まってないのに勝手に口が動いた。



「っ、……すいませんでした!!」



自然と身体が動いて深々と頭を下げる。



「俺のせいで九澄先輩には辛い決断をさせてしまいました」



退学なんて人の人生を左右する重過ぎる決断をして平気なわけがない。

何も感じてないわけないのに…。



「嫌なこと、全部1人で背負わせて、すいません…」



『嫌な役、全部背負っただけじゃねぇの』



本当、その通りだ。
陽嗣先輩に言われて気付くなんて遅過ぎる。
いつもそうだ。後悔してから大切なことに気付いてその自己嫌悪や罪悪感に押し潰されて自滅する。
いつもその繰り返しでその度に大切なものを失っていく。



もう嫌なんだ。

後悔するのも、こんな想いをするのも。



「……立夏くん、顔を上げて下さい」



それなのにまた繰り返してしまった。

独り善がりで身勝手な俺のせいで。

もう大切なものを失いたくないと思っていたのに。



たいせつ、な…―――















「、」



あれ、俺、どうして…。



何かに、気付き掛けた。

気付いてしまいそうになった。



脳裏に過った彼等の姿にグッと心臓が握り潰される。



頭の中で警報が鳴る。

まだ早い。それは今じゃない、と。



『なーに変な顔してんのさ?俺達もう仲間っしょ!』



(まだ、自覚したくない…)



少なくともそれは今じゃない。


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